『賭博者』―自助・共助【主張】10月4集(生保版)

『賭博者』―自助・共助

―一人のフランス人は、三万フランに及ぶ金
を儲け、それから負けてしまったが、いささかの動揺も示さず、楽しそうだった(ドストエフスキー著『賭博者』原卓也訳)。
 一八六六年、ドストエフスキーは欧州各地の賭博場での経験を元に本作品を発表した。
 賭博、ゴルフさらに証券投資は、金に糸目をつけない富裕層の嗜みである。少々の金銭の損失を惜しまないのが、真の紳士である。
 「期待効用基準」に基いて、経済主体の危険に対する態度を見ると、概して低所得者は危険回避的であり、高所得者は危険愛好的である(酒井泰弘『不確実性の経済学』)。
 確かに元手に限りのある低所得者は博打のリスクを望まないだろうし、儲けを度外視した富裕層は損失を甘受するに違いない。
 このため、二〇一六年可決のIR推進法においては、国内の富裕層、外国人(中国人)のカジノ施設への入場が期待されている。
 世界保健機関(WHO)は「ギャンブル障害」に続き、依存症の一つである「ゲーム障害」を国際疾病分類(ICD)の疾病として認定した。こうした依存症は大脳前頭前野の機能低下に伴う辺縁系の活性化を原因とする。
 我が国におけるパチンコ・パチスロによるギャンブル依存症の疑いのある人は約三二〇万人に達する(厚労省推計)。これを個人収入階級ごとに見ると、幅広い所得層がパチンコを楽しむという(総務省「社会生活基本調査」)。
 期待効用基準に捉われず、損得を超越した非現実のスリルを楽しむ遊技といえよう。
 金融審議会報告書の提起した「老後二千万円問題」。所詮厚生年金保険(被保険者数五千万人)の枠内での話。対処すべきは自己責任で切り捨てた国民年金(同千六百万人)における無年金者/低年金者問題である。ここに国民の分断を見る(一九年年金財政検証)。
 報告書では公的年金(共助)を基礎として個人の自助努力により、積立投信等で不足する所得を補完するという。「社会保障制度改革国民会議報告書(一三年)」では「自助→共助」の順による生活保障を推奨していた。今回の報告書では以前に戻り自助が共助を補完する。
 競争に曝された民間保険会社を混乱に巻き込むことを危惧する。経済金融政策との協働により、高予定利率の一時払契約、変額保険、外貨建て保険等の機動性に欠ける金融保険商品の導入は、相場の「高掴み」により保険者/契約者何れも深い傷を負ったことがある。
―能登殿ちッともさはぎ給はず、安芸太郎を弓手の脇にとッてはさみ、弟の次郎をば馬手のわきにかいはさみ、ひとしめしめて、生年廿六にて海へつッとぞ入り給ふ(覚一本『平家物語』巻第十一能登殿最期)。
 金融崩落必至の今日、金融当局が窮乏化する中間層を奈落への道連れにすることは「適合性原則(金商法四十条)」の趣旨からも許容できない。富裕層のノブレス・オブリージュ(貴族の義務)の出番である(客員・林)