2000万円…老後に不足する金!【主張】11月1集(生保版)

2000万円…老後に不足する金!
 この夏の参議院選挙の直前のこと、金融庁の金融審議会(作業部会)が、「老後の生活資金には、年金とは別に2000万円の金が必要」である旨のレポートをまとめた。そのレポートを巡り、公式発表しないとか麻生大臣が受け取らないとか……何だか意味不明の大騒ぎが起こった。
 レポートの中身は至極当たり前のもので、大騒ぎするような内容ではない。安泰な老後生活を送るには、公助たる年金に頼るのではなく自助努力で金融資産を貯めるべきだとして、その目安の金額を示したのである。そこには株式市場等への資金誘導を図りたい当局の意図があったかもしれない。しかし目先の選挙への影響を強く意識する政府・与党からは、選挙民の「老後不安をあおる」としてレポート(の内容または発表)に対して反発が起こったのだ。
 この問題の発端は、十年ほども前の「百年安心年金」発足にさかのぼる。それに先立って年金を巡っては、杜撰な記録で「消えた年金」、掛け金の未払いで「未払い三兄弟」、お粗末な資産運用「グリンピア」など、マスコミが面白おかしく取り上げた不祥事が際限なく続いたものだ。
 そんなこともあって自公の連立が野に下り民主党が取って代わったのだが、それも短命に終わり再び自公が政権に返り咲いたとき、年金でのゴタゴタを解消すべく、給付と負担を関連付けた制度として再出発する際に「百年安心年金」をスローガンに掲げた。
 多くの国民は、これで「長年にわたる年金のゴタゴタは概ね片付いた。現役世代の給与が下がれば年金額も減額されるなどの制約はあるが、この程度の変更は公的制度だからやむを得ない……それより一安心だ!」と思ったに違いない。まことに素敵なネーミングであるが、その「一安心」が実は曲者で、「老後生活が一安心」ではなく「年金制度が一安心」が真相であったのだ。国民が思い違いで成案を得たことで、厳しい批判にさらされていた厚生官僚や政権は一息ついたと思う。
 この「百年安心年金」の思い違いは、政権サイドが意図したものと疑いたくないが、それでも遅ればせながら今回のレポート騒動で明らかになったのは幸いであった。そこで問題としたいのは、国政の中には「専門性や技術性が高いことで、国民が思い違いしやすい案件」が多数あるとおもうが、その際の思い違いに対する防止策や責任の取り方である。
 関係者なら誰もが責任を重く感じるべきであるが、特に担当する官僚や族議員のほか、マスコミや学者そして野党議員の役割も大きいと思う。思い違いを起こさないよう、また思い違いを放置ないよう、それぞれの分で最善をつくしてもらいたい。
 「消防署の方から来ました」との話法で、消火器の販売に成功する笑い話があるが、それが国政でまかり通らせる訳にはいかない。
             (客員・岡本)