次のステップは?【主張】12月2集(生保版)

次のステップは?
 米国フェイスブックの仮想通貨「リブラ」構想を巡る動きが急である。報道によると、先日も主要国の財務相や中央銀行総裁が集まる会合で議題に取り上げられたが……しかし「当面は同社の動きを封じ込め、周辺の様子も見てから対応を考えよう」程度で終わったようである。具体的な議論の内容は知る由もないが、このような通貨システムが実際に動き出せば、これまでの金融や経済の仕組みが、それが良いか悪いことかは別にして、ガラリと変わること間違いない。この時期に、対応の先送りは大いに疑問である。
 東京の日比谷公園の一隅には、我が国が委託統治したヤップ島の巨大な石貨が展示されている。何十年も前に私が経済学を勉強し始めたころ読んだ本には、この持ち運びが不可能な石貨にまつわる面白いエピソードが幾つか紹介されていた。いずれも貨幣の本質は何かを深く考えさせるものだが、今日的に言えば「通貨システムにおいては、的確な情報と信用が何よりも重要」であることである。その重要性は過去も現在も変わらず、おそらく将来でも更に言えば仮想通貨であっても同様だと思う。その当時の私は、ちょうど金融や保険を学び始めた頃であり、銀行による信用供与と保険による保障の提供は、外形的には全く異なるものの、銀行や保険会社がリスクを引き受ける点においては驚くほど似ていることを理解して、初学者ながら妙な納得感を得たことを懐かしく思い出す。
 ここで私が述べたいことは、単なる昔話ではない。これからの金融そして決済システムの話である。伝統的な経済先進諸国では政府が中央銀行とがっちりスクラムを組み、諸国間でも連絡を取り合いながら世界の金融に大きな影響を及ぼす。そのことを自国通貨である元が未だに基軸通貨となり得ていない中国などは、どのように見ているのだろうか。
 同社のザッカーバーグ氏が米国議会で意見を述べているように、伝統的な先進諸国がもたもた決心しかねている間にも、後発であるが故にしがらみの少なく元気な国が、金融分野に出て同様の仕組みを用いて主導する可能性は高い。携帯電話は有線の電話の普及が遅れていた国ほど、またキャッシュレスは現金が汚く偽札も多い国ほど、急速に普及した例を思い起こせば、現実味が増す。
 国家権力で民間の銀行を意のままに動かして今に至る我が国の状況を顧みると、当局の幹部及び若手エリートには「これまでのように権力や権威に頼るのではなく、謙虚に基礎教養の涵養に努め、将来を展望して弾力的な発想で速やかに事に当たる」ことを強く要望する。まさに温故知新……使い古した表現ではあるが、この中央官僚の核心的な職務とも言えるテーマに最大努力で取り組んで、早急に「次のステップ」が示されるのを大いに期待する。         (客員・岡本)