教育の機会均等【主張】1月3集(生保版)

教育の機会均等
 年も明け、世は受験シーズン本番を迎える。思い返すと昨年後半は、教育を巡る報道が多かった。特に教育を受ける権利の平等性確保の問題が改めて関心を集めた。一方、過重労働による教育現場の荒廃など教育を提供する側の問題も指摘された。加えて、一部の教員間にいじめという驚くべき事件の報道があり、問題の背景に対する論評が続いた。構造的な問題なのか、一部の教育機関だけの問題なのか、想像すら困難である。改めて子供たちに十分な義務教育と、高等教育まで受けさせることの難しさを思い知らされた。教育評論家の様々な評論はあるものの、これらの問題の結果が及ぼす影響が生徒・学生たちのその後の社会参加に著しい障害になってはならない。
 教育を受ける機会は地域差、教育機関の充実度、国籍、宗教や親の経済格差といった多要因が影響している。国家を支える人材を育成することは国家経営の根幹であり、子供たちを均しく社会に送り出すことは政治の重要課題であろう。多民族国家の米国では、人種差を乗り越え教育の機会均等を確保するためアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)が、紆余曲折を経ながら一定の機能を果たしたことは有名である。
 日本では、本来高等教育を受けるためのセーフティネットであるべき日本学生支援機構の貸与型奨学金が返済滞納者への回収をめぐり「ブラック奨学金」(日本労働研究誌)と批判され、これを受けて政府は2017年に給付型奨学金を創設している。教育の機会均等を支える奨学金制度が足を引っ張るという皮肉な状況だったのである。そして政府の一員たる大臣から教育の経済格差を容認するかのような「身の丈」発言があったことは、多くの国民と学生に失望感を与えたはずである。
 さて、第3期がん対策推進基本計画が作成され、現在実行に移されている。計画の中には思春期・若年成人(AYA世代)を対象とした支援策が盛り込まれている。成人と比較して対策が遅れてきた世代であり、特有のがん療養の問題がある。昨年10月に開催された国内最大級のがん関連学術会議に参加してきたが、病院内で長期に療養する高校生の教育問題が取り上げられていた。療養で教育の機会が奪われる問題が存在するという。平成27年には学校教育法施行規則の一部が改正(文部科学省令第19号)され、遠隔授業で病院内授業の履修が認められた。しかし、残念ながら通信環境整備や教員配置問題で全国的な展開は不揃い状態だと報告されていた。
 闘病患者の就労支援への商品提供やサービスが業界でも始まっているが、受験生が東奔西走している陰で、少数ながら血液がんなどの長期入院で学業との両立に悪戦苦闘している患者がいる現実も忘れてはならない。国の教育機会均等策は勿論であるが、AYA世代への業界の取り組みが教育の機会確保に役立たないかと年始にあたり思いが馳せるのである。          (客員・佐々木)