再保険での「食い逃げ」は許されない?【主張】2月2集(生保版)

再保険での「食い逃げ」は許されない?
 近年とくに昨年の我が国は、地震や台風そして大雨による河川の氾濫など数多くの自然災害に見舞われている。そのため、これらリスクに関わる保険金等の支払額も急増し、当然とは言え、保険料の値上げも検討の俎上に上ってきた。
 自然災害リスクと言えば、その多くが地域的に集積する性格があり、再保険を利用したリスクの国外移転も必然となる。したがって再保険への需要も高まり、再保険料の引き上げ等の要求も避け難くなることが容易に想定される。
 毎年始の行事として、これから三月末にかけて海外の再保険会社から、多くのキーマンが我が国の顧客(元受けの保険会社)を訪れる。ちょうど暦年ベースの企業決算が多い地域の顧客への対応が一段落した時期であり、我が国のような新年度が四月から始まる地域の保険会社を対象に、再保険の引受け条件などを協議するためである。さぞかし今年などは、強気の値上げモードで迫るものと思われる。
 損害保険の事業においては、再保険は最重要かつ必須マターであり、決して避けては通れるものではない。また生命保険や共済そして少額短期であっても、その位置づけは各社で区区とは言え、それが重要であることに違いはない。
 そのわりに、二〇年ほど前に損保三社の経営破綻の契機ともなった「フォートレス事件」を例にとっても、保険経営者における再保険に関わる知識や意識が不足する実情が気にかかる。
 再保険のことは、一口に「保険会社の保険」と呼ばれることが多いが、保険の一種に違いはないものの、一般的な保険とは次の諸点が基本的に異なることを理解しなければならない。
・保険での「相互扶助の精神」などに全く関 係のない純粋な経済取引である。
・行政監督(保険業法の規定はともかく実際 の監督権限)の対象外であり、引き受け条 件等は当事者の協議による。
・その有効性は相互の信頼でのみ実現する  が、その前提として両者共に一定水準以上 のリテラシーも不可欠である。
 再保険会社のキーマンの口からは、自然災害による保険金そして再保険金が増加した現状と悲観的な将来見通しまで、繰り返して語られるに違いない。もちろん再保険の引受け条件の改定交渉のための伏線である。
 そのとき諸兄は、どう対応されるのだろうか。再保険金の「食い逃げ」は許さないと言わんばかりの強弁は軽く無視すればよいが、私ならば「そうですねえ。でも、それだから消費者に保険の必要性が認識され、保険会社に再保険の重要性が意識づけられるとすれば、悪くもないのでは……」と返すと思う。
             (客員・岡本)