全世代型社会保障制度【主張】2月3集(生保版)

全世代型社会保障制度
 先日の日経郵送世論調査によると70歳以上まで働くつもりだと答えた人は60歳代で54%にのぼり「人生100年時代」を迎え、高齢者を中心に就労意識が大きく変わっていることが浮き彫りになった。今国会に提出される法案とともに政府も企業も高齢者が働き続けることが出来る制度作りを目指している。
 昨年9月に、安倍総理を議長とする「全世代型社会保障検討会議」が設置され、年末に中間報告が取りまとめられ、この中間報告をもとに、2020年1月20日に開幕した通常国会の施政方針演説で安倍総理は「社会保障をはじめ、国のかたちに関わる大改革を進めていく」と述べ、70歳までの就業機会を確保し「働き方の変化を中心に据えながら、年金、医療、介護全般にわたる改革を進める」と説いた。今国会で高齢者雇用や年金の関連法案の提出が予定されている。特に70歳までの就業機会を確保する高齢者雇用促進及び中途採用・経験者採用の促進とともに厚生年金保険法改正案による年金支給開始年齢の引き上げが議論されることと思われる。
 年金支給開始年齢の引き上げとともに在職老齢年金の年金減額基準は60歳~64歳は現行の「月収28万円以上」を引き上げ、65歳以上は現行「月収47万以上」維持のままが予定され、就業促進効果を狙っている。
 しかしながらこの全世代型社会保障制度は名称とは逆に少子高齢化による働き手不足の解消と国の社会保障負担の軽減を目的にされているのものと考えられる。既に消費税10%の引き上げにより低所得者層の高齢者には少しずつ負担がのしかかりつつあり、健康の良し悪しにかかわらず働かざるを得ない社会になりつつある。
 日本人の平均健康寿命は男性72・14歳、女性74・79歳(2016年)であることを考えると年金支給開始年齢の引き上げと就業機会の確保はそれぞれの個々人の健康寿命とのバランスを考える必要があろう。
 諸外国の年金支給開始年齢は概ね65歳であるものの年金財政が逼迫していたブラジルが昨年年金改革法を成立させ65歳(女性は60歳)とした。オーストラリアの年金支給開始年齢は2023年までに段階的に67歳に引き上げられることが決まっている。
 日本の年金制度では支給開始の繰り下げを行うと年金支給額は1か月毎に0・7%増となり70歳まで繰り下げると42%増えるため「人生100年時代、長生きリスクに繰り下げ支給を是非ご検討を!」と私の友人の元厚労省労働局長も言っていたが年金額が増えると税金も社会保険料も増えるため、実質手取りは33%しか増えない。
 結局全世代型社会保障制度はいいことづくめではない。ただ、今我々にできることは出来る限り健康を維持すること。そのためには生活習慣病にならないように適度な運動と摂取する食事に気を遣い、認知症にならないために就業を通じた社会参加することではないだろうか?        (客員・原口)