超低金利が浮き彫りにする金融機関経営  の課題【主張】3月3集(生保版)

超低金利が浮き彫りにする金融機関経営  の課題
 金融関係者が集まる会合で話をする機会があり、超低金利の継続が銀行と生命保険会社の経営に及ぼす影響について解説した。
 日本銀行のマイナス金利政策による副作用として銀行の収益悪化が挙げられている。多くの生命保険会社にとっても、金利水準の低下は経営を圧迫する要因だ。しかし、低金利が銀行にも生命保険会社にも悪影響を及ぼすとは、考えてみれば不思議ではないか。
 かつて銀行はむしろ金利低下の恩恵を受けていた。銀行は預金などの短期調達と、貸出金などの長期運用の利ザヤが主要な収益源の1つであり、イールドカーブ(利回り曲線)が右肩上がりであれば、比較的容易に収益を稼ぐことができた。しかも、金利低下に合わせて預金金利を下げれば、貸出金が折り返しとなるまで利ザヤは拡大する。バランスシートで説明するならば、金利低下で資産価値が高まるのに対し、負債(預金)の価値はあまり変わらないため、純資産(資産-負債)は増加する。ところがマイナス金利政策で、短期金利から10年金利までほぼ0%となり、イールドカーブが右肩上がりでなくなってしまった。これでは長短金利差に起因する利ザヤを稼ぐことはできない。
 伝統的な銀行ビジネスの利ザヤの源泉は長短金利差と、貸出先の信用リスクである。マイナス金利政策で利ザヤが稼げなくなったのは、イールドカーブの平坦化以前の問題として、信用リスクに応じた貸出が質、量ともにできていなかったためだ。個人だけでなく、企業も資金余剰主体となって久しく、特に地方部では人口減少の影響も資金需要に影響を及ぼしている。ただ、あえて厳しい言いかたをすれば、これらは20年以上前からわかっていた話であり、銀行経営者は金利低下の恩恵を受けていた時期にビジネスモデルの修正を行うべきだったのだろう。
 生命保険会社はどうか。銀行になぞらえれば、多くの生保は保険販売による超長期調達(しかも固定金利)と、有価証券を中心とした長期運用という資金構造であり、金利水準が下がると固定金利の保険負債が重荷となる。2000年前後に中堅生保の経営が相次いで破綻したのは、1990年代前半からの金利低下に耐えられなかったことが一因だ。その後も金利水準は下がり続け、ついにマイナス金利となっても今の生保が一定の健全性を確保できているのは、株式などの資産運用リスクを減らし、保障性商品の販売に力を入れることで、資産運用以外でリターンを上げるビジネスモデルを構築・維持してきたためだ。
 もっとも、マイナス金利政策以降の生保経営には首をかしげることも多い。経営リスクを保険引き受けではなく、外国証券など資産運用によるリスクテイクに配分する行動が目立ち、その一方でコストのかさむハイブリッド調達(劣後債発行など)を積極的に行っている。こうした姿を見ると、生保のビジネスモデルの持続性にも危うさを感じる。地域金融機関の苦境は対岸の火事ではない。    (客員・植村)