新型インフルエンザのパンデミック【主張】7月2集(生保版)

新型インフルエンザのパンデミック
 新型コロナウイルス感染症(COVID-一九)の流行が始まって半年近い。ワクチンや治療薬などの開発が各国で進められている。しかし、有効で安全なワクチンや治療薬が開発されるとしても、相当の時間はかかろう。ワクチンには、抗体依存性感染増強という強い副作用も懸念されており、このことがワクチンの開発を失敗させるおそれもあるという。いずれにせよ、政府は、今後のための準備に最善を尽くす必要がある。だが、問題はそれだけにはとどまらない。次第に暑くなってきて、熱中症が増加し、それがCOVID-一九と重なると、医療崩壊のおそれもあるという。また、豪雨や台風、大地震、インフルエンザの流行、火山の噴火などが、COVID-一九と同時に発生するおそれもある。
 その中で私が注目しているのは、インフルエンザ、ことに新型インフルエンザのパンデミックだ。単なるインフルエンザの流行であっても、COVID-一九と重なることによる医療崩壊が懸念されている。それがかつてのスペイン・インフルエンザ規模のパンデミックであれば、それだけで、政府の最大となるシナリオでは、発症率二五%、欠勤率四〇%、死亡者数六四万人にも及ぶという。こうした事態に対して、政府は、新型インフルエンザ等対策特別措置法を制定するなど、準備を進めてきた。しかし、COVID-一九と重なって新型インフルエンザのパンデミックが起これば、現在のままでいくと目を覆わんばかりの惨状に見舞われることは確実だろう。政府には、こうしたことも踏まえて、せめてCOVID-一九とインフルエンザが同時期に流行するという前提で、全体的かつ本格的な対策を期待したい。
 その一方で気になるのが、生命保険会社の経営への影響だ。近年の低金利がボディ・ブローのように効いている中で、現段階でもCOVID-一九によって、相当の影響を受けているだろう。しかし、新型インフルエンザのパンデミックが起こったとき、死亡保険金や入院給付金の支払いの増加や新契約の大幅な減少だけではなく、企業の経営状態の悪化や個人の収入の減少による信用リスクの増加、株価や債券、ファンドの価格の下落による価格変動リスクの実現など、生命保険会社に相当の規模の損失を与えることが想定される。ことに、今回のCOVID-一九のパンデミックよって、さまざまな事態が発生してきていることに鑑みると、新型インフルエンザのパンデミックの場合も、その点は同様であろう。さらに、COVID-一九のパンデミックが収まる前に、新型インフルエンザのパンデミックが発生してしまえば、両者がいわば相乗効果を発揮して、損害が単なる加算では済まなくなるだろう。そのような場合であっても十分な健全性を維持できるよう、さまざまな対策を講じておいてほしい。
(客員・宇野)