SDGs目標見直しと「新たな日常」【主張】8月4集(生保版)

SDGs目標見直しと「新たな日常」
 「SDGs目標を改定する時だ」というタイトルの提言が、ネーチャー誌(7/14)に掲載された。周知のとおり2015年に国連で設定された目標である。今では、保険会社も含め多くの企業が経営指針に取り入れ、7月17日に閣議決定された骨太方針にも言及されている。
 SDGsには、貧困や飢餓解消のために、経済成長の持続性が設定されているが、時に他の目標達成と対立関係になるため議論を呼んできた。くしくも新型コロナで経済成長については、世界的に不透明感が増している。「政府の医療と経済回復の目標は、時に二律背反であり国民の不安に十分に答えるのは大変困難」との見解を日本医学連合・日本医学会が表明しているように、医療と経済を両立させる目標ですら達成困難な状況である。
 さて、ウイルスが人類の脅威であるように、過度な人類の経済活動は、SDGsの達成に不可欠な青い地球の維持にとって脅威である。その証左としてロックダウン中に環境改善の兆候が随所に見られたのである。
 世の中ではウィズ・コロナが叫ばれているが、ウイルスとの共存だけでは、視点が矮小化されている。パンデミックの根源について考えれば、我々に求められているは、ウィズ・ネーチャーやウィズ・アースなのであろう。
 冒頭に紹介した論文には、「貧困、飢餓、不平等を解消し、健康、幸福、経済成長を促進するという目標は、消滅に向かっている」という、国連における悲観的な懸念が示されたことを紹介し、SDGsの目標を見直す時という論文タイトルにつながっている。現実的には難しいはずであるが、経済成長の目標を切り離すことが必要だという意見があることも報告されている。一方、新型コロナで各国の考え方や行動が劇的に変化し、抜本的な対応が可能であるという見解を論文の総評として示している。言外に、経済を含めた抜本的政策の変化の必要性が込められている。
 前述の骨太方針は、現下の感染症対応の喫緊の課題に対応するために、従来の経済再生や財政再建は影を潜め、全体目標は昨年の「全世代型社会保障の改革」から、今回「新たな日常」というフレーズへ移行した。「新たな日常」の定義は明確ではないが、デジタル化、地方創生、人的資本などの無形資産への投資、および包摂的な社会の実現が、目標達成の手段として挙げられている。
 すなわち社会的混乱を糧に、企業活動を含めた社会基盤のあり方をリセットする好機にしなければならない。著名な雑誌ランセット(7/18)に「ノー・モア・ノーマル」のタイトルで、「新型コロナ後に通常に戻ることを切望していますか?」との問いが投稿されている。おそらく、我々は人類史に残る岐路に立たされ、その先に「新たな日常」が見えるのであろう。フィンテックやインシュアテックは、社会基盤として当たり前に存在し、それ自体にニュースバリューのない日常である。          (客員・佐々木)