全世代型社会保障【主張】1月4集(生保版)

全世代型社会保障
 全世代型社会保障改革の政策(以下全世代保障)は、2012年民主党菅政権で初めて登場し、その後社会保障制度改革国民会議報告においても採用され、10年近い歴史がある。一方、これまで公表された各政策文書では、その表現する内容は微妙に違っている。高齢者に偏っていた給付を、全世代に不公平感なく給付できる社会保障の導入が当初の政策であった。しかし、前政権では高齢者を社会参加させ、負担の担い手にするという目標が加わり、派生目標として予防、健康長寿の達成も加えられ、政策のテーマは多岐にわたってきた。
 昨年末に全世代型社会保障検討会議が、「全世代型社会保障改革の方針」(最終報告)を報告した。菅政権発足初の社会保障への取り組み姿勢の公表であるが、実際は前政権のもとで勧められた社会保障政策への取り組みの最終報告である。前政権下の骨太方針を見ると、全世代型保障が政策の主要テーマになったのは2019年であり、結果として最近は全世代保障の表現をよく耳にする機会が多くなっている。
 さて、最終報告を見ると医療保険の負担増と不妊治療対策だけで、年金に加え、介護・予防などのテーマが消えた乏しい内容に、驚いた読者も多いはずである。中間報告で宿題になっていた医療保険制度改革の具体化も進展はみられず、中間報告で取り上げられた地域医療の確保、ゲノム医療実現やデータヘルス改革などへの今後の取り組みは示されていない。
 国の主要政策の中でも、国民生活の安全弁である社会保障に対する期待は高く、コロナ禍で、特にその在り方が官民を問わず議論されている。教育弱者の増加、失職者に対する住居確保、介護施設利用自粛で家庭内介護負担の増加など喫緊の課題は山積みである。住宅保障やインフォーマル介護(家庭内介護)への給付が、社会保障の柱として整備されている国もある中、日本の対応は貧弱であることが、改めて認識されている。菅政権には、社会保障に対する本格的ビジョンを明確にして、国民にその方針を早期に知らしめて欲しいものである。
 さて、社会保障の骨格を為す社会保険と民間保険の保険料負担が、トレードオフの関係にあることは、学術的知見というより常識的な理解であろう。デフレの再燃すら懸念される現在、家計におけるワイズスペンディングの機運は高まらざるを得ないはずである。菅総理は、歴代の総理よりも国民の自助を強調しているが、国民が社会保障の現状を理解しなくては、必要な民間保険への加入という自助の選択は難しいはずである。したがって、保険業界も公私の役割を十分に洞察し、消費者へ適切な情報とサービスの提供が、より重要になることを年始に指摘しておきたい。
            (客員・佐々木)