将来世代への配慮【主張】4月4集(生保版)

将来世代への配慮
 私たちは、いくつもの重要な問題の解決や決着を将来に先送りしている。たとえば、原子力発電所の問題だ。福島第一原子力発電所は、廃炉への道筋が見えておらず、廃炉終了の姿も今後の課題とされている。私たちは、廃炉が終了すれば、何の問題もなく跡地を使えると思いがちだが、まったく使えないことも十分ありえるのだ。通常の原子性廃棄物も中間保存施設の設置場所が決まらず、最終処分地を決めるどころではない。また、今後多くの原子力発電所が廃止されるが、発生する原子性廃棄物の処分場も決まっていない。
 地球温暖化問題も同様だ。有効な温暖化対策を採らなかった場合、二一世紀末には二〇世紀末に比べて平均気温が最大四・八度、平均海面水位が最大八二センチ上昇する可能性があるという。この結果、平均の最大風速が秒速六七メートル以上のスーパー台風の増加、マラリア、デング熱などの動物媒介性感染症や熱中症の増加などさまざまな影響が想定されるが、政府の対応は、国際的に見ると必ずしも前向きとは思えない。
 また、地球上の海には、現在一億五千万トンもの海洋プラスティックごみがあり、毎年八百万トンずつ増加し続けているといわれている。さらに、二〇五〇年には海洋プラスティックごみの量が海にいる魚を上回るという予測もなされている。たしかに、マイクロ・プラスティックが生物に与える影響は、必ずしも明らかではないが、無視することはできないだろう。
 このような問題は、現に生を受けている私たちの子どもや孫たちとまだ生まれていない世代からなる将来世代にも大きな負の遺産を残すものでしかない。しかし、一八歳未満の子どもたちは選挙権も有していないし、ましてやまだ生まれてもいない世代は、何の意思表示のしようもない。加えて、人間には将来のことよりも目の前のことを重視し、将来を楽観的に捉える性癖があるといわれており、こうした問題を先送りしがちだ。しかし、子どもたちが将来投票権を持ったときでは遅いのだ。今からでもよいので、彼らに代わって彼らの将来に役立つような意思決定のできる仕組みが必要ではないか。
 こうした仕組みとして、さまざまなものが提案されている。たとえば、将来世代になったつもりで将来世代の代理をし、国などの意思決定に反映させるフューチャー・デザインがある。ウェールズの将来世代委員会は、フューチャー・デザインを具体化したものといえ、公共団体などがさまざまな政策策定をするとき、意思決定が与える長期的な強い影響について委員会が助言を行う。こうした委員会に一定程度政策決定の際の投票権を付与することも考えられるだろう。将来世代のために、ぜひともこのような制度の導入を検討してもらいたいものだ。   (客員・宇野)