新しい働き方は本当に普及するか?【主張】6月2集(生保版)

新しい働き方は本当に普及するか?
 2021年4月25日より3度目の緊急事態宣言が発令されたが、最初の発令から1年経過する中でこれまで各企業ともに新型コロナ対策を講じてきている。特に保険業界に目を向けるとテレワークの実施、クラウドデータベースの活用、オンライン会議の活用、非対面による保険申込み、モバイルパソコンでの顧客提案活動等新契約実績が落ち込む中、非対面での事業活動の推進に腐心してきた。
 テレワークの浸透とコロナによるインバウンド需要の消滅によって高級ホテルもサービスアパートメントと言われるサブスクリプション(サブスク)を始めるホテルも出てきた。ホテルならではの施設やサービスが定額で使え、幾つかの老舗ホテルが1週間、1か月単位または日中だけのデーユースで客室をセカンドオフィスとして提供している。
 更に休暇と仕事を両立させるワーケーションも少しずつではあるが定着しつつある。家族と一緒に休暇で避暑地や避寒地へ行き合間に仕事もこなすための施設も増えてきている。コロナによって観光業界全体が多大な被害を受ける中、稼働率の低い平日にリゾートエリアの会員制施設やホテルを特別価格で提供し、施設内の感染症対策、装備はもちろんのこと仕事用の椅子、モニター、HDMIケーブル、電源タップも準備されており、きれいな空気のリゾートで働く人の創造性を刺激している。
 昨年の最初の緊急事態宣言下では会社の契約書に会社印を何十件と押印するだけの為に出社する総務担当者の姿がテレビに映され、日本の判子社会の問題も浮き彫りにされたが、世界的には日本と同様判子文化の台湾を除いてサイン社会である。更に米国が世界で一番電子署名の普及が進んでいて全米50州で法的な効力を有している。日本では弁護士ドットコムが運営する「クラウドサイン」やシャチハタクラウド等が契約書の電子署名を推進している。実はこの電子署名にはタイムスタンプの認定制度(認定された事業者により発行される電子的な時刻証明、令和3年4月より総務大臣による認定制度が開始した)が不可欠となっている。
 一方テレワークを始めとした新しい働き方は特に大企業でこの1年で大分浸透してきているものの、昨年の中小企業白書の「資本規模別、テレワークの導入状況」を見るとテレワーク導入率と会社の資本金規模は綺麗に比例しており、資本金1000万円未満企業の導入率は11・5%、5億~10億未満企業約30%、50億円以上企業は52・3%となっている。日本の企業の大部分は中小企業であり、テレワークに不向きな産業構造になっており中小企業は規模的にはオフィスもそれほど「密」にならないし、何か事あれば携帯で話せば事が足り、テレワーク用のシステムをわざわざ導入する必要性を感じていないつまりテレワークに適さない業務が多いということだろう。保険をはじめ金融業界では一定の新しい働き方が普及しつつあるものの新しい働き方は日本の産業のすそ野である中小企業への普及も含めてウォッチしていく必要があり、産業構造の転換が急がれると思われる。
             (客員・原口)