ワクチン接種の目的【主張】7月1集(生保版)

ワクチン接種の目的
 新型コロナウイルス感染症のワクチン接種がようやく進んできたが、その目的についてはほとんど触れられることがない。目的を述べている数少ない例が首相官邸のウェブサイトである。そこでは接種の目的を「新型コロナウイルス感染症の発症を予防し、死亡者や重症者の発生をできる限り減らし、結果として新型コロナウイルス感染症のまん延の防止を図る。」としている。つまり、「発症を予防し、死亡者や重症者の発生をできる限り減ら」すことを一義的な目的としている。
 これに対して、予防接種法を見ると、「伝染のおそれがある疾病の発生及びまん延を予防するために公衆衛生の見地から予防接種の実施を講ずることにより、国民の健康の保持に寄与する」とした目的規定がある。つまり、予防接種の目的は、一義的には「疾病の発生及びまん延を予防する」ことといえる。なぜ、首相官邸のウェブサイトの目的は、これほどまでに予防接種法と異なるものになったのか。
 ワクチンには一定程度の有効性が認められている。しかし、有効な期間、将来のウイルスの変異に対する有効性など、まだ明らかでないことも多い。ワクチンは接種できない人や接種を希望しない人がいるため、すべての国民に接種できるわけではない。たとえ接種できたとしても、発症予防効果などは一〇〇%にはならない。また、接種に伴う、接種部位の疼痛、発熱、アナフィラキシーなどの副反応もある。さらに、主要なマスコミはほとんど触れることはないが、ワクチン接種後の死亡者は少なくない。厚生労働省によれば、二〇二一年六月四日までに医療機関などから死亡として報告された事例は、一九六件であった。そのうち五月三〇日までに亡くなった人一三九人の死因は、くも膜下出血などであるが、全員が情報不足等によりワクチン接種との因果関係は評価できないという。
 一方、集団免疫はどうか。集団免疫が獲得できれば、ワクチンを接種しなかった人も守られる可能性は高まる。しかし、どの程度の接種率になれば獲得できるのかは、接種していない人の分布などによっても異なる。たとえ日本が獲得できたとしても、世界中に接種率の低い地域があれば、日本に再度感染が流行するおそれがある。さらに、ワクチンの効きにくいウイルスの変異が起こればなおさらだ。このように集団免疫も決して万全のものではない。しかし、世界中が協調し、時間をかければ、世界全体が集団免疫を獲得できる可能性もあるという。
 このように考えてくると、我々は、世界中での集団免疫獲得を目指すしかないのだろう。こうした状況の下で、政府は、予防接種法と異なった曖昧な説明に終始するのではなく、ワクチン接種の目的、リスクとベネフィット、今後の見通しを積極的に明らかにし、国民の理解を得る必要があるのではないか。
             (客員・宇野)