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2019.08.09
ロイズ オブ ロンドンの今【主張】8月3集(生保版)

主張
ロイズ オブ ロンドンの今

 グローバル化が加速している。国家間の折衝の舞台もG7では不十分とG20へと広がり、企業活動もまた国境を越える一方、新たに「GAFA」に象徴される無国籍、プラットフォーム化が進行している。
 保険業は危険分散の仕組みを必要とすることから本来的に国際的な業態である。そのシンボルともいえる英国のロイズ オブ ロンドンは17世紀の創立期から保険ブローカーを介在して元受・再保険の国際取引を軸に繁栄してきた。英国のEUからの離脱は連日報道されているとおり混迷を極め、企業を翻弄し、ロンドンに置く欧州本部をブリュッセルなど大陸に移すことを余儀なくされている。シティという自由で開かれた金融街を有効に利用してきたロイズもEU側に拠点を構築せざるを得ない事態となっている。
 さて、ロイズの2018年度の経営指標を見てみると、収入保険料規模は355億ポンド(約4兆8千億円)、対前年比5・7%増と増収傾向を維持しているものの、税引き前収益では
10億ポンド(約1360億円)の赤字(前年度は20億ポンドの赤字)、コンバインドレシオは104・5%(前年度114%)と2年連続の悪績を呈している。3期前までの良好な成績からの転落は明らかに米国や日本の自然災害の頻発が原因であり、地球温暖化に起因する異常気象が影響していると考えられる。ロイズのビジネスの源泉は、種目別構成で再保険31%、財物27%、新種26%、海上7%、エネルギー4%、自動車3%、航空2%、地域的には米国/カナダ51%、その他アメリカ7%、英国14%、その他欧州13%、アジア11%、その他4%と多様で国際性溢れるポートフォリオを有している。
 ロイズは通常の保険会社とは違い、引受母体(シンジケート)へ法人や個人が出資し担保力を支えている。法人会員は世界の保険会社が中心であり、日本の三メガ損保も主要なシンジケートを買収し世界拠点と位置づけている。中国、韓国の損保社もこれに加わり、ロイズはかつての個人富裕層の投資先としての市場から変貌を遂げ、国際企業が店舗を一堂に会する場(モール)として機能している。
 グローバル時代にある現在、ロイズの抱える課題や目標には各国の損保社にとって先行事例として大いに参考になるものが多い。確かに、元来直属の販売網を有せず、総代理店や保険ブローカーをビジネスソースとする効率的な製販分離主義、顧客に分りやすい保険約款の標準化、平易化、ITによる業務処理、徹底した財務ガバナンスの推進、女性リーダーの登用等々先進的な取り組みには一歩先を行くものがある。他方、課題には、自然災害が多発するなど巨額なリスクに対して経営の安定を如何に図るのか、セクシャルハラスメントなど組織のコンプライアンスの強化、サイバー、宇宙、生態リスク等々の新たなリスクへの挑戦など克服すべきものも多くある。
 今、プラットフォーム化するロイズの動向から目が離せない。    (客員・小島)

2019.08.02
乗合型代理店への“褒賞合戦”激化【主張】8月2集(生保版)

乗合型代理店への“褒賞合戦”激化
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◎「五~六月は保険料一千円ごとに一千円分
 の商品券をプレゼント」
    二〇一九年五月二二日付、朝日新聞
◎「六月までに新契約で、五〇万円達成した
 代理店は、二〇%の営業支援費を上乗せ」
     二〇一九年六月六日付、朝日新聞
◎「東京二〇二〇オリンピック観戦ツアー」
   二〇一九年七月三日付、日本経済新聞
◎「○×生命による「沖縄研修」「北海道研
 修」「リゾートギフト券の提供」
   二〇一九年七月三日付、日本経済新聞
────────────────────
 これらは、親会社である生保会社が、傘下の乗合型代理店に対して販売奨励用に配付したチラシのタイトルである。まさに、大手も中堅も外資も褒賞合戦を展開している。
 なかでも、注目されるのは、東京五輪のゴールドパートナーを務める某大手生保会社が成績優秀な代理店に対する表彰パーティーで示した奨励策である。五輪チケット──それも開会式や男子一〇〇メートル決勝というほとんど入手困難なプラチナチケットを優先配付するという魅力的な内容である。
 このところ数ヶ月ほどの間に、生保営業に関連する不祥事が連続的に起きている。「訪問営業」、「ノルマ」、「過度の褒賞」──これらは生保会社が今日まで長く続けてきた営業スタイルそのものである。同じような問題を銀行も抱えている。
 このうち、「ノルマ」が問題化し、金融機関としては、三井住友銀行がノルマ廃止を宣言している。すぐその後で、日本郵政傘下のかんぽ生命が契約者の負担増につながる保険商品を販売していたことや、ゆうちょ銀行でも、高齢者への不適切な投資信託の販売が発覚した。これを受けて、日本郵政としては、ノルマ営業は見直すとしている。
 「訪問営業」の問題点は、売り手側で、売る商品を絞り、その結果、説得営業にならざるを得ず、改正保険業法で謳う「お客の意向把握や比較推奨を前提とする」営業が実現できないことにある。
 今回は、三つ目の「過度の褒賞」が問題になっている。乗合型代理店の最大のメリットは、複数の生保会社の商品のなかから、自分にベストな商品を選べることにある。そのさい重要なのは、そのベストチョイスを助ける代理店の「公平性」である。
 現在、生保営業には、大きな変化が起きつつある。乗合型代理店の存在感が増大しているのである。伝統的生保会社のなかには、子会社を設立し、乗合型代理店を保有するところが増えている。
 憂慮すべきは、これらの乗合型代理店で、自社商品を売ってもらおうと、褒賞合戦が起きていることである。これは顧客無視の極みであり、せっかくの理想的な生保の営業体制を壊す行為である。

2019.07.29
働き方改革への対応【主張】8月1集(生保版)

働き方改革への対応
 政府は、去る6月下旬『経済財政運営と改革の基本方針2019~「令和」新時代:
「Society5.0」への挑戦~』を閣議決定し、内容を公表した。この方針は、少子高齢化の進行する我が国において、持続的かつ包摂的名税材成長の実現と財政健全化の達成の両立を基本認識とし、“新たな時代への挑戦:「Society5.0」実現の加速”と銘打ち、多方面に亘る課題に対応することを示している。ここでは、喫緊の課題の一つとして挙げられる「働き方改革」を考察することとしたい。
 先の方針のうち、「働き方改革の推進」の中で『育児や介護など一人一人の事情に応じた多様な働き方を選択でき、誰もがその能力を思う存分発揮できる一億総活躍社会の実現に向けて、働き方改革を推進する。働き方改革関連法については、…長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、同一労働同一賃金の導入など雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を着実に推進すべく、円滑な施行を進める』『子育て、介護、治療など様々な事情に応じて、柔軟に休暇を取得できるよう民間企業において、1時間単位で年次有給休暇を取得する取組を推進する』こと等が記されている。
 厚生労働省が公表しているとおり、認知症患者は一層右肩上がりに上昇すると推計され、老親の介護を余儀なくされることで離職に追い込まれる働き盛りのビジネスマンが少なくないと言われている。このことは、個社にとって人材の損失だけではなく、引いては本人・個社を取り巻く業界を含めて大きな痛手となる可能性もあることから、在宅勤務や取得しやすい介護休暇等、柔軟な就業態勢の構築が求められるところだ。
 生保会社の中には、既に従業員向けの介護セミナーや介護休業・介護休暇、就業時間短縮などの業務と介護との両立支援制度を実施している。この制度は、職場において介護が“自分事”として共通の理解があってこそ成り立つものであろう。多くの会社で同様の措置が図られることを期待したい。
 生保業界では、公的保障の補完として一部の会社で介護保障商品を提供し、販売実績が急増するなど、消費者の関心の高さを物語っている。誰もが罹患する危険性を孕む認知症に対し、予防そして仮に罹患しても重症化させない処方箋を医学界総出で開発して欲しいものである。
 また、長時間労働の是正は改めて指摘するまでもないことだ。『働き方改革の実現及び定着に向けて、…中小企業・小規模事業者への支援に取り組む』とあるように、下請企業が元受企業の犠牲となることのないような実態把握と罰則規定を早急に設けるべきである。なお、生保業界では多くの顧客との面談・勧誘を行う営業職は、顧客の要望に沿った行動(休日出勤)が求められることがある。この点につき、長時間勤務、過重労働とならないバックアップ体制を含む十分な配慮がなされなければならない。     (石原)

2019.07.22
営業教育【主張】7月4集(生保版)

営業教育
 大阪サミットでは、医療を満足に受けられない人が世界で36億人いるという惨状が取り上げられた。世界的にユニバーサルカバレッジ(UHC)を達成させることが、成果文書に盛り込まれている。多くは、貧困のために低額な医療すら受療できない人々である。
 日本はUHCを達成し、世界の中でも最優等生国家である。主たる要因は様々であるが、国民皆保険として公的医療保険が整備されたことが主要因の一つである。国民は保険診療を信頼して受療できるので自由診療を回避することが可能で、医師は保険診療により安定的に収入を確保できる。また診療報酬制度で個別医療技術の価格の調整と医療費の総額制導入により、国民医療費の管理が可能になっている。さらに、保険診療に伴う自己負担に対してセーフティネットである高額療養費制度も用意され、世界から羨望されている。したがって、医療制度の面で途上国への支援は日本に課せられた使命なのであろう。
 一方、充実した医療保険制度には問題も指摘されている。国民に医療価格に対する感性を鈍麻にさせていることである。実際に2016年のオプジーボ、さらに先日のキムリアに象徴される高額医療の報道は、国民にショック療法となった可能性があろう。しかし、国民がどれだけ医療費に関心を持ち、医療というサービスの適正価格について理解が深まったか疑問は残る。医療制度、新医療技術の導入、そして高額新薬の登場など、医療環境はターニングポイントを迎えていると称されるほど、現在激動期の最中にある。だからこそ、医療価格に対する感性を養い、効用と価格のバランスを身に付ける必要がある。
 民間保険は公的医療保険の補完機能を有し、募集資料では治療費などの保障を謳っている。ところが、激変する医療環境の中で医療価格の相場感の無い消費者に、適正医療価格を基準にした保障額の説明は、募集人にとって難題のはずである。医療関連業界の製薬企業では、IFPMAコードという国際製薬連合会のコードオブプラクティスという倫理規範が存在し、今年の1月に改正された。景品類の提供や社会的儀礼の香典が禁止になった。各社の営業競争は、医薬品の効果に関する情報提供が主となり、営業のあり方や営業担当への教育も大きく変わろうとしている。 翻って保険業界は、募集人への過度な販促施策が規制され、また保険業界の慣行であったGNP(義理人情プレゼント)を基本とした販売から、情報提供義務による販売と意向把握へ変化している。これらの諸事情を勘案すれば実効性のある営業教育が重要になることは自明であろう。
 実際に、保険募集人向けに、医療や商品の解説をしていると、聴衆の真剣さと適切な営業教育への渇望感が伝わってくる。おそらく保険の本質を見つめた募集人としての使命感の表れであろう。各社のさらなる営業教育の質的向上を期待したい。 (客員・佐々木)

2019.07.17
外国人労働者への保障対応【主張】7月3集(生保版)

外国人労働者への保障対応
 周知のとおり、今年度より外国人労働者受け入れ拡大が実施される。これは、我が国の労働力不足を解消するために、入管法(出入国管理及び難民認定法)を改正し、新たな在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」等を新設したものである。
 対象業種は介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の14業種となり、1号は「相当の知識や経験を必要とする技能、業務上必要な日本語能力」を有する者で通算5年を上限とし家族帯同は不可、2号はさらに「熟練した技能」を持つ者として、期間の更新に上限を設けず家族帯同が認められている。今後、向こう5年間で最大34万5150人を受け入れることとしている。
 慢性的な人手不足に喘いでいる事業所にとっては、言葉の障壁がない労働者として受け入れることが可能となれば、当該事業の活性化及びその存続に途を拓くことに繋がる。一方、労働者としては出身国よりも賃金の高い職務に就くことができるものと思われ、5年間で帰国したとしても、我が国への親日度合いは高く維持されることが想定され、外国人労働者の需給環境は急激な経済状況の変化が発生しない限り、定着するものと思われる。
 約35万人の外国人労働者に対して、受け入れる事業所としては、適切な生活環境を提供することは言うまでもないことである。それに加えて、滞在期間中に見舞われる可能性のあるリスクに対しては、民間保障事業としても彼らに保障提供を検討してもよいのではないか。滞在期間が長期に及ぶ特定2号有資格者には、収入に見合う大型保障への加入が考えられる。また5年間の滞在期間となる特定1号有資格者では、1年更新の保障として、少額短期保険事業への加入勧奨が相応しいものと思われる。彼らへの保障提供を契機として、これまで定住してきた外国人への保障も合わせて拡大しても良いのではないか。
 生保業界でいち早く外国人従業員の取扱いの拡大を表明したのは、大同生命である。1月下旬に発表されたニュースリリースによれば、入管法改正に伴い外国人労働者の増加が見込まれることを踏まえたもので、中小企業に勤務する外国人従業員を対象に、日本語の手続きが困難な方々に対して生命保険加入を可能とする内容としている。
 今回の措置によって、同社が主力市場とする中小企業において、一層安全・安心して働きやすくなる職場環境が実現することになろう。『経営者の「国籍に関わらず、全ての従業員を大切にしたい」という想いにお応えする』との同社の経営姿勢は、高く称賛されるところだ。
 少子高齢化の進展する我が国で、外国人労働者を活用しなければ、業務に支障が出る業種が存在する以上、早急に彼らの職場環境の不安を払拭する取組みが求められる。(石原)

2019.07.08
『藤野先生』―『秋風秋雨愁殺人』【主張】7月2集(生保版)

『藤野先生』―『秋風秋雨愁殺人』

―わたしがわたしの師であると思いきめている人の中で、彼はもっともわたしを感激させ、わたしを励ましてくれた一人なのである(魯迅『藤野先生』駒田信二訳)
 一九〇四年、中国の作家魯迅は日本に留学、仙台医学専門学校で、細菌学者藤野巌九郎による解剖学の講義に参加し厚遇を受けた。二十年後、本作品を発表している。
 科学技術大国を標榜する我が国の立ち位置を「科学技術力」ランキングで見よう。
 「注目される論文数」ランキングによると、〇四―〇六年、一五―一六年の二期間の比較で、米英はいずれも一、二位を占める。前の期間では、ドイツ、日本と続くが、後の期間では、六位であった中国が二位に割り込み、一方で我が国は九位へと急落する(科学技術・学術政策研究所「科学技術指標二〇一八」)。
 これを「大学」ランキングで確認しよう。
「学習環境」「論文引用」「研究」「国際性」「産学連携」を評価基準とする。十位以内には、英米の大学、中国・香港の大学は五十位以内に四校、我が国の大学は一校となる。とくに、「国際性」における「留学生の割合」は上位の大学で三〇パーセント以上であるが、我が国の大学では一〇パーセントである(英国の「タイムズ高等教育ランキング二〇一九」)。
 また論文生産性に関して、我が国の官民合わせた研究開発投資総額は米国、中国に次ぐ世界三位にあるものの、投資額当たりの論文数は主要九か国中最低となる。我が国の研究生産性の低迷について、国際共同研究の割合の低さを原因の一つに挙げている(オランダの学術出版社エルゼビアの報告書)。
 さらに七か国の若者を対象とした意識調査によると、「海外留学を希望する」日本人は約三割と唯一、五割を下回り、「留学したいと思わない」が五割を超える。「引き籠り」現象の一つかとも考えるが、原因は「費用」「治安」「語学力」さらに「国内での就活」を指摘できよう(内閣府『子ども・若者白書一九年版』)。
 科学研究は、外国人との共同研究での切磋琢磨により成果を得るわけで、例えば米国のフルブライト奨学金制度の恩恵を受けた日本人には四名のノーベル賞受賞者が含まれる。
―また彼女の絶命詞とつたえられる「秋風秋雨愁殺人」は「秋瑾集」では、風と雨がさかさになって「秋雨秋風」と印刷されている。
(武田泰淳『秋風秋雨人を愁殺す』)
 魯迅と同じく浙江省紹興を故郷とする秋瑾女史は我が国の実践女学校に留学したものの、帰国後は辛亥革命(一九一二年)の前哨戦となる革命運動に与し、捕縛され刑死に際して、引用した辞詞を遺したという。当時の新興国である日本には満州族の圧政に苦しむ中国人の留学生、凡そ一万人が派遣されている。
 米中両大国による世界覇権を巡る貿易摩擦を見るときに、百年前の清国留学生に思いを馳せないわけにはいかない(客員・林)

2019.07.02
業界専門紙の役割とは【主張】7月1集(生保版)

業界専門紙の役割とは

 4月末に急逝した保険ジャーナリスト石井秀樹さんのお別れの会に参加した。石井さんのご冥福をお祈りするとともに、氏が長く保険毎日新聞の記者を務め、独立後もインスウォッチをはじめ、保険業界人が目にする媒体で健筆をふるっていたことから、業界専門紙誌や業界専門ジャーナリストの役割について改めて思いを馳せてみた。
 保険業界には本紙「インシュアランス(週刊)」のほか、「保険毎日新聞(日刊)」「新日本保険新聞(週刊)」「保険情報(週刊)」「インスウォッチ(週刊)」といった数々の業界専門紙がある。かつてに比べれば少なくなったとはいえ、1つの産業に複数の業界紙が存在するのは、それだけ保険業界の関係者が多く、かつ、業界に関する情報が必要とされてきたことの表れであろう。
 業界専門紙を文字通り「業界人のための専門情報を提供する新聞」と定義すると、業界紙の役割は、一般の新聞や経済誌には載らないような詳細で正確な業界情報を提供したり、同じ情報でも一般紙誌とは違い、業界関係者向けの目線で伝えたりすることである。業界関係者を主な読者層としているのだから、一般紙と同じ目線でニュースを伝えていたのでは存在意義は乏しい。
 ネット時代が到来する前は、保険会社のニュースリリースや監督官庁の公表する資料をそのまま掲載するだけでも価値があっただろう。だが、環境は劇的に変わっている。各社の発表をそのまま記事にしたようなものに大きな紙面を割く意義を見出すのは難しい。亡くなった石井さんは、例えば保険ショップの全体像を取材の積み重ねにより報じていたが、業界紙にはこうした付加価値のある情報提供がますます求められている。
 特に求められるのは、ファクトに基づいた継続的な情報発信であろう。以前、保険毎日新聞が会社別の変額個人年金保険の販売状況を一覧表にして、それを定期的に掲載していた時期があった。各社の公表資料には保有契約と資産残高くらいしか情報がないなかで、銀行窓販の現状を知る貴重な情報だった。こうしたニーズは今でもある。例えば各社が公表する「契約高・件数」「年換算保険料」などを見ても、業績動向をつかむのは難しい。年換算保険料が増えていても、貯蓄性の強い外貨建て保険の販売が前年度よりも多かっただけかもしれない。ブームとなっていた経営者向け保険が各社の業績にどの程度反映されているのかも全くわからない。保険業界の健全な発展のためには米国AMベスト社のような存在が日本にも必要ではないだろうか。
 さらに言えば、業界専門紙に期待される役割は関係者向けの情報提供にとどまらない。サポーターと言うとやや誤解を招きそうだが、業界べったりの代弁者ではなく、業界の内外をつなぐ存在であったり、辛口のご意見番だったりと、関係者に対して「ムラの外ではこう見ている」という、いわば風を吹き込むような役割もあると思う。

2019.06.25
生命保険会社の顧客志向【主張】6月4集(生保版)

生命保険会社の顧客志向
 生命保険会社は、残念ながら顧客志向が高いとはいえない。私がそう思うのは、次のようなことを見聞きするからである。
 第一は、付加保険料がほとんどすべての商品について高すぎると考えられること。ことに、私が不満に思うのは、医療保険である。死亡保険に比べて募集が容易であるから、付加保険料が少なくてよいはずである。第二は、現在の保険業法では、その不十分な規制のために生命保険会社の信用リスクは、実現しうる。生命保険契約者保護機構と預金保険機構を比較すると、銀行の方が補償の面で勝っているが、会社は、生命保険契約者保護機構の補償の詳細を示していない。この問題との関連で、掛け捨ては損であるという意識を払拭しようとする会社の努力がなされていないことも問題である。第三は、高額療養費制度について、会社がきちんと説明しないこと。ウェブで「○○生命 高額療養費制度」と検索すると、ほとんどの会社がこの制度について顧客向けの説明をしていないことが判る。そのうちの何社かでは、その会社の健康保険組合が組合員(つまり従業員)に対してこの制度を説明したページがトップに出てくる。
 このように顧客志向が低い原因は、次の点にあると私は考えている。第一は、営業職員や代理店を顧客として捉え、契約者を顧客として捉えてこなかったこと。このことは、会社にとって、顧客に保険を契約してもらうことよりも、募集人に募集してもらうことの方が大事であると考えていることを端的に表している。第二は、これまでの成功体験があること。今の方法でこれだけ保険が募集できてきたので、それを変えるインセンティブが働かない。第三は、保険業法の中に顧客志向にもとる規制が存在していること。たとえば、保険会社の業務又は財産の状況に照らしてその保険業の継続が困難となる蓋然性がある場合には、保険会社の破綻前から保険金の削減を可能にする保険会社の破綻前における契約条件変更規制である。この規制は、契約者保護のために作られたとされるが、保険会社の破綻前に保険金が削減されるのが契約者保護といえるはずもない。第四は、消費者が、保険契約者の立場から生命保険に関する知識を正しく身につけられなかったことである。
 こうした状況の改善を生命保険会社に期待することは難しいので、消費者は、自分で自分の身を守るしかない。そのためには、消費者が健全に生命保険を選択できる知識を持つことが不可欠であり、適切な支援が必要である。また、顧客志向にもとる保険業法の規制や保険会社の健全性維持のための規制も見直す必要がある。
 私は、生命保険会社は、顧客志向を高めなければ、決して真の意味の一流会社にはなれないと考えている。生命保険会社には顧客志向向上にむけての努力を求めたい。
(客員・宇野)

2019.06.18
通信×金融の新たな連携に注目【主張】6月3集(生保版)

通信×金融の新たな連携に注目
 標題は、去る4月下旬に開かれた携帯3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)主催の「+メッセージ」機能拡充に関する記者説明会において明らかにされたもので、その意義について考察することとしたい。
 その前段として、「+メッセージ」について紹介しておかねばならない。これは、携帯電話番号だけでメッセージのやりとりができるコミュニケーションサービスで、昨年5月から提供を開始している。今般、その機能拡充が明らかにされたもので、それによると「+メッセージ」上に企業の公式アカウントが表示され、利用者は企業とやりとりができるようになり、例えば本人認証が必要となる契約内容確認・変更等の手続きを簡単・便利に行えることになるとしている。
 3社は、利用者が企業からのサービスを一層利用できるよう、拡充機能をオープンプラットフォームとして公開するとして、利用者の安心・安全・便利を目指し、豊かなコミュニケーション環境の実現に向けた取組みを進めていく方針を示したものである。
 このことを踏まえ、ジェーシービー、東京海上日動火災、日本生命、野村證券、三菱UFJ銀行の日本を代表する金融5社とトッパン・フォームズを含めた6社は、金融機関横断の共通手続きプラットフォーム構築に向けて、検討開始を表明した。この構想は、先の3社提供の「+メッセージ」と連携、ユーザーインターフェースを一本化し、従来、利用者が金融機関別に行っていた各種手続きを簡素化し、負担軽減を図るとともに金融各社の業務効率化を実現しようとするものである。 説明会では、最近のテクノロジーの変化やスマートフォンの普及および生活スタイルの変化を踏まえ、共通手続きプラットフォームを通じて、①+メッセージから金融機関から共通の方法で手続きが可能、②複数金融機関の手続きが一括で完了、③スマートフォンで手続き完結により、安心・便利・簡単を謳っている。プラットフォームの基本設計完了時には5社だけでなく、本邦金融機関に対し広く参加を呼び掛けるとともに、最終的には国内の全金融機関が利用できるシステムを構築していく考えにあるという。
 各金融機関の利用者にとって、家族構成の変化や転居等に際して、現状では機関ごとに手続きを通知しなければならないことが、煩わしい点として挙げられている。これを+メッセージを通じて1回で済ますことができれば、大いに利便性を享受することとなろう。また、各機関としても一層の事務効率化が図られる。説明会において、金融5社はその有用性に期待する旨を表明したが、まさにwin・winの関係構築を実現できる。
 今回の共通プラットフォーム構想では、将来的に国内全金融機関の参画を標榜している。一消費者としても、早期にその姿を見たいものである。関係機関における柔軟かつ弾力的な協力態勢に期待したい。  (石原)

2019.06.11
AI(人工知能)と人間【主張】6月2集(生保版)

AI(人工知能)と人間

 自動運転車への対応は損保業界の大きな課題である。自動運転車事故における責任の所在、すなわちプログラム設計(作成)者、自動車メーカー、運転者、対向車、追突車等の関係者の責任の考え方については現在確定的なものはない。しかしながら、AI化の進展の根本的な問題はそのような皮相的なものではない。AI(Artificial  Intelligence :人工知能)は、研究者により様々に定義されるが、端的に言うと「言語の理解や推論、問題解決などの知的行動を人間に代わってコンピュータに行わせる技術」ということになるだろう。杉山将東大教授によれば、その学問領域は統計学、数学、電子工学、情報処理学等70を超え、それぞれが高密度な相互作用によって更に知能を高め得る状態へと急速に変化してきているという。しかしながら、AIの進化をこのまま黙視していてよいのか言い知れぬ恐怖を感じるのも事実である。
 2015年2月、オックスフォード大学の研究者らが「文明を脅かす12のリスク」と題する報告書を公表した。そこには極端な気候変化、核戦争、パンデミック等に続いて10番目に人工知能(人間による制御が不可能になった、人工知能独裁者や膨大なロボットの出現)が位置づけられている。シンギュラリティという言葉を最近よく聞くようになったが、これは、「人工知能が人間の能力を超える特異点」のことであり、それは2045年にやって来ると言われている。AIの暴走はこれまで小説や映画ではSFの世界として描かれてきたが、いよいよ現実のものになりつつあるようだ。
 このAIの脅威に対して、人間はどのように対処すべきなのであろうか。そのヒントは人間自身にあるように思われる。それはいくらAIが進歩したと言ってもその土台は人間が作っているということである。チェスにおいて今やコンピュータは世界チャンピオンクラスの実力を持っているとされるが、対戦ソフトの元データは人間のプレイヤーがこれまでこなしてきた攻撃、防御の駒の何千何万もの組み合わせ事例なのである。ノーベル賞認知心理学者ダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー」によれば、人間がチェスの最高レベルの腕前に到達するまでに少なくとも1万時間を練習に費やすという。この人間の地道な苦労を経ずしてデータインプットされているのであるから、人間と互角あるいはそれ以上にプレイできるのは当たり前なのである。こう考えると、AIの脅威をいたずらに恐れる必要はなく、人間は叡智を用いて、AIの進化・発展に伴う社会的悪影響を倫理的、法的、社会的に評価・分析しコントロールする必要があるし、またできると思い至る。
 とかく技術先行で進められるAI化であるが、今後は、科学技術面のみならず、哲学、倫理学、心理学といった広範な人文科学分野を動員し、人間と地球にとって安全であること、人間がコントロールすることの原則を堅持したAI化を期待したい。(客員・井上)
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