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2019.04.18
七〇歳まで働く【主張】4月4集(生保版)

七〇歳まで働く
 最近、七〇歳まで働くという話が出てきている。七〇歳の平均余命は、男性で一五年強、女性で二〇年強である。また、古いデータであるが、六五歳の健康余命は、男性で一五年強、女性で一八年弱である。これらのデータから見る限り、七〇歳まで働くということは、十分ありえるだろう。
 私は、七〇歳まで仕事があるのは、良いことだと思っていた。私が七〇歳まで仕事を続けることができたのは、率直なところ、健康に恵まれていただけではなく、大学教員としての教育と研究には大きなやりがいがあり、充実していたし、仕事の相当部分を自分の裁量で決めることができる内容であり、給与面でも六〇歳以前と変わらなかったからこそである。しかし、六五歳になったころから、これが普通の仕事であれば続けることは難しかったと感じていた。もちろん、こうした感じ方は、人によって大きく異なろう。
 こうした中で太陽生命が導入した六五歳定年制度・七〇歳までの継続雇用制度が注目される。これは、これまでの六〇歳定年を五年間延長し、特別職員制度と役職定年制度を廃止し、継続雇用の期間を六五歳から七〇歳までとしたことによって、平均して一五%以上の生涯賃金を向上させたという制度である。
 もともと、七〇歳まで働くにあたっては、健康、体力、気力と仕事の内容が従業員にやりがいを持たせるものであることが求められよう。健康や体力、気力の必要性はいうまでもない。健康と体力を維持するには、若いうちから十分な健康管理と体力の維持を図り、企業もそれを十分にサポートする必要があろう。また、気力については、仕事の内容などに大きく左右されよう。
 太陽生命の制度は、果たして従業員のやりがいを維持できるであろうか。六五歳までは、これまでの五七歳以前と同程度の水準の給与が支払われ、企業が認めた場合には役職に登用されることなどを考えると、一定程度のやりがいは維持されよう。しかし、六五歳以降の継続雇用では、これまでの継続雇用と変わらないため、やりがいが維持されるとはなかなか思えない。もともと継続雇用で低い給与しか払えないというのは、従業員のキャリア開発に問題があったとも考えられる。六五歳以降でも十分稼げるような仕事のできる従業員を育て、組織もそうした高齢者の存在を前提にしなければならないだろう。
 太陽生命のこの制度は、なかなか素晴らしいものではあるが、従業員のスキルアップによって継続雇用の間の年収をさらに引き上げること、六五歳より前からも継続雇用の適用を認めることなどによって、より素晴らしい制度になろう。
(客員・宇野)

2019.04.12
統計(数)学【主張】4月3集(生保版)

統計(数)学

―「統計は豊かな暮らしのアドバイザー」、
(総務省「統計の日」標語。昭和五〇年受賞作品)
 我が国では中央官庁を始めとして、統計の専門家が不足するという。文科省は「学習指導要領(平成二九年・三〇年改訂)」において小中高を通じた統計教育の充実を強調し「新たに取り組むこと、これからも重視すること」として「データを分析し、課題を解決するための統計教育を充実します」と期待を込める。
 小学校では「資料を分類整理し、表やグラフを用いて、特徴を調べたりする」「資料の平
均や散らばりを調べ、統計的に考察する」。 
 中学校では「収集した資料の代表値を算定し、さらには確率についての理解を深める」「統計的推測により与えられた母集団の傾向が読み取れることを理解できるようにする」。
 高校では「確率について理解し、不確定な事象を説明する」「統計的推測により、母集団
の傾向を説明する」と力強く締め括る。
 大学教育では一般教育科目の重要科目として文系・理系を問わず「統計学」の選択を推奨している。自然科学はもとより、社会科学、人文科学、あらゆる学問/科学研究では資料を分類し、実験を繰り返し、帰納的に因果関係を発見する。そこでは数学の一分野としての統計数学を道具とする。
 数学は公理に始まり推論を加えることにより、演繹的に定理を導きだす唯一の科学である。最も数学に近い物理学でも公理ではなく原理に始まり、実験を繰り返して得られた統計数値により、定理ではなく法則を導き出す。
 今日、我が国では、独立した統計学部を持つ大学は少ない。数学の分野では「応用数学(統計学、数理ファイナンス、ゲーム理論等々)」がある。統計学は統計数学を基礎として、統計的推測の判断において、データの選択、母集団の範囲決定基準をつけ加える。
 「応用数学」は経済学部に講座を持つことが多い。経済学と統計学の接点は、ケインズ経済学に基礎を置き七〇年代に発展したマクロ経済学の一分野である「時系列分析による計量経済学」での応用が大きい。
 統計的推測においては、恣意性を排除できない。深刻な例を挙げよう。僅か三年九ケ月
のうちに八四六回の「大本営発表」。六〇年代の「所得倍増計画」。所得は倍増したが、物価も倍増。五〇年後の今日では、物価が上昇すると所得が上昇するらしい。英国EU離脱強硬派(元外相ボリス・ジョンソン)による「毎週五百億円のEU分担金の節減により、NHS(国家医療制度)の負担が軽減される」という(後日虚偽と判明した)キャンペーン。
―「活かせ統計、未来の指針」(同平成三〇年受賞作品)
 総務省は二〇一九年統計の日(一〇月一八日)標語を募集したものの、社会保険労務士試験の参考書(平成最後の)『厚生労働白書三〇年版』は未だに発行されていない(客員林)

2019.04.08
示唆に富む指摘と提言【主張】4月2集(生保版)

示唆に富む指摘と提言
 生保協会は去る2月25日、「創立110周年記念式典」を開催した。この式典は、人生100年時代と言われる中で、様々な社会課題の解決等に向け、生保業界として果たすべき役割について情報発信を行ったものである。ここでは、登壇者からの幾つかの指摘や提言につき考察することとしたい。
 冒頭、稲垣協会長による主催挨拶の中で生保業界として社会課題を解決し更なる飛躍を遂げるためには3つのP(Preparedness,Pro-tection,Prevention)の必要性を説き、それぞれの具体的施策によって、「安心と希望に満ちた未来を切り開く」ことを描いていきたいとの決意表明は、少子高齢化の進行や社会保障給付費の増加、疾病構造の変化する状況となっても、一人ひとりの契約者の人生に寄り添う業界だからこそ実現できるものであろう。会社の枠を越え、業界一丸となって国民の期待に応えてもらいたいところだ。
 来賓の遠藤金融庁長官は、業界に期待することとして、経営環境の変化への対応と顧客本位の業務運営を追求し持続可能なビジネスモデル構築、若年層への金融リテラシー向上と独自性の発揮を挙げた。前者については、全加盟会社がその対応に取り組むとともに定着度を示す成果指標公表に努めているが、特に高齢顧客への外貨建保険販売において、信頼を損なうことのないよう早急な仕組み作りが求められる。後者については健康寿命延伸を踏まえた健康増進型保険の提供など“生保ならでは”の商品・サービスが誕生しているが、その動向が注目される。
 木村副会長による金融リテラシー教育推進の取組み紹介は、遠藤長官の期待した1つに応えた内容である。これまでの生保協会のイメージを刷新した、いわば若年層がくいつき易い動画コンテンツとして、多くの若者からの「いいね!」とともに、「保障」の重要さに気付くことを望みたい。
 2つのパネルディスカッション「医療介護分野における国民と生命保険の将来」および「Society5.0における生命保険の役割」では、それぞれ斯界の有識者をパネリストに迎え、様々な角度からの指摘・提言がなされた。
 このうち、社会保障制度がどう変化しようとも、その補完産業としての役割発揮は不変ということだ。殊に介護保障や在宅医療の提供は一層、需要が見込まれる分野であることから、その対応に万全を期して欲しい。また、情報技術革新が進展する社会で、契約者等の個人データの民間利活用は、取扱いに関わる消費者代表からの懸念に対して如何に応えるか。その上で、契約者の承諾を前提に新たな商品・サービスの結実に期待したい。
 清水副会長による閉会挨拶で、高齢化・長寿化の進む中、生保会社への期待・役割の大きさに言及、その期待に応えるために顧客や行政、専門家との対話・議論の積み重ねが重要と語ったが、その実現に向けた業界全体での行動がより一層必要となろう。 (石原)

2019.04.01
「国際線機長の危機対応力」を読む【主張】4月1集(生保版)

「国際線機長の危機対応力」を読む
 3月にエチオピアで墜落事故を起こしたボーイングの同型機が各地で運航停止になった。本稿の執筆時点で詳しい原因はわかっていないが、同機に搭載された自動操縦装置が何らかの影響を及ぼしたとの指摘がある。
 ボーイングとエアバスでは自動操縦の設計思想が異なるとされてきた。国土交通省の資料によると、エアバスは人為的ミスを防ぐ観点からパイロットよりもコンピュータの制御を優先する設計思想なのに対し、ボーイングの考え方は、コンピュータでは判断できない極限状態ではパイロットの制御を優先するというものだ。いずれであっても現代の飛行機はパイロットの「腕」で飛ばすものではなく、パイロットが自動操縦装置を使って飛行するものである。つまり、操縦技術よりも、複雑なシステムを動かすオペレーターとしての役割が重要となっている。
 それではパイロットに求められる資質とは何か。PHP新書「国際線機長の危機対応力」(横田友宏著)によると、「飛行機の操縦とは、未来を変えるためにいま行動すること」であるそうだ。いま起きている事象を見て、それに対処するだけの人間ではダメで、「まだ事実が事実としての実態を持たない、兆しの段階でそれを捕まえ、その兆しがいかなるものに発展するかを見極め、その兆しに対応するために様々な対応を行っておく」(本書より引用。以下同じ)。しかも、時間的に制約があり、かつ、情報の一部しか知りえない状況下で、意思決定をしなければならない。これは企業のリスクマネジャー、あるいは経営者にも通じるところがあるように思える。
 教官として何人もの機長を育てた著者がパイロットに求める要件は非常に厳しい。そもそも最初に出てくるのが、「パイロットの資質を持たない訓練生はパイロットにさせない」である。そして、「機長は単なる操縦士ではない。機長はフライトというプロジェクトを成功に導くためのプロジェクトマネージャーでなければならない」「機長として大事なのは『自我の抹消』である。(中略)機長は一切のとらわれを離れ、気象状態と管制官の指示やほかの飛行機の流れ、飛行機の状態だけを考えなければならない」「機長は、猛々しいライオンであってはならない。機長は長い耳を持つ、臆病なウサギでなければならない」と続く。余計な雑念を持たず、チームのなかでリーダーシップを発揮する臆病なウサギに、あなたはなれるだろうか。
 次のような記述も耳が痛い。「うまくいかない原因を自分以外の周りの責任にして自分は変わろうとしない人間は、絶対に機長にはなれない」「隣の教官やチェッカーがどう考えているかばかり気にしている副操縦士も、機長にはなれない」。
 本書はパイロットという特殊な専門職の話を取り扱っているが、保険業界人にとっても、専門職としてのあり方や、マニュアル化するのが難しい「考え方」「哲学」の伝承を考えるうえで、大いに参考になりそうだ。
              (客員・植村)

2019.03.25
健康寿命延伸と世代交代【主張】3月4集(生保版)

健康寿命延伸と世代交代
 NHK番組「老後破産、長寿という悪夢」が2014年に放映され、長生きが社会問題化している。人類が望んできた長寿が、生きるためのリスクになるとは、誰が予想できたのであろうか。国は、問題解決策として健康寿命の延伸と生涯現役社会を掲げ、「Productive Agingの実現」を目指している。
 一方、寿命や老化は、社会学的にも生物学的な面でも関心が高く古くから研究者が取り組んできた。ヒトは、加齢と並行して老化が進み、若い時期に生殖能力が高く、生殖年齢が終っても、長期間生存する特徴がある。このような特徴は生物種で大きく異なっている。
 ゲノム科学の進展は、この分野にも新しい多くの知見をもたらしている。サーチュイン遺伝子や細胞老化などの研究は大きな成果をあげ、今後期待される研究領域である。中でも重要な成果としては、寿命を延伸することは、老化病を克服することと強く関係しているのが分かったことである。逆に老化病を克服すれば健康寿命の延伸につながるので、結局老化病の対策は、健康寿命と生存寿命の両者の延伸をもたらすのである。できるだけ、労働生産に係わる期間を伸ばし、生涯現役社会の実現と、介護の手間や医療費負担が発生する期間が短縮し、人が「ピンピンころり」で終末を迎える社会の実現は、国と国民が一致して望む点である。
 さて、健康寿命や生存寿命の延伸と共に、はたしてヒトが生きられる上限の限界寿命が、延伸するのかは分かっていない。限界寿命が延伸すれば、保険制度の根幹に関係する。2016年科学雑誌Natureに、生物には限界寿命があり、種特異的に固定されているという内容が報告された(ゲノム科学の進展は報告に含まれていない)。ヒトでは115歳前後に限界寿命が固定されている報告である。どのように健康寿命を延伸させても人は老化の結果、死を迎えるのである。すなわち老化は、ヒトの生命機構にシステム的に組み込まれ進化してきたのである。
 しかし、個体の生存にとって不利な老化機構の存在は、これまでの進化論とは対立する。最近の研究では、老化は個体の生存より集団の継続にとって重要であり、集団の世代交代に必要な機構であるという。また、個体の利己的な生存を調節し、集団の存在に危機が及ばないようにしているのである(集英社、ミッテルドルフの著書参照)。では、国民集団からすると国策の評価はどうであろうか。
 直面する社会的課題の克服に、健康寿命延伸と生涯現役社会実現の目標は妥当だが、一部の集団にだけ効果が集中しない制度設計を忘れてはならない。また世代交代が円滑かつ効率的に進む仕組みが、同時に担保されていなければならない。企業における定年延長と役職交代のセットに限らず、社会全体の世代交代を円滑に進ませる仕組みを検討することも、生物の進化論からは必要なのであろう。   (客員・佐々木)

2019.03.19
顧客本位の業務運営とKPIの活用【主張】3月3集(生保版)

主張
 顧客本位の業務運営とKPIの活用

 金融庁は、「顧客本位の業務運営に関する原則」の公表後、この原則に基づく業務実施の定着度合いを客観的に評価する成果指標(KPI)を採用し、発表している金融事業者名を公表している。同庁は、この指標の公表を通じて、顧客本位で運営する業務の定着度に関し、「見える化」が進む、と期待しているからである。
 調査結果によると、昨年9月末までに本運営原則の実行を採択し、取組方針を公表した約1500社の金融事業者のうち、約400社が自主的なKPIを、約30社が共通KPI(金融事業者間で比較可能なKPI)を公表しており、その多くがこれらの数値を時系列で表示している。本運営による業務遂行を実施する事業者は今後増加すると予想される。
 金融事業者のうち、保険会社・代理店をみると、取組方針を公表した会社は約250社、KPI公表会社は約70社。この中で、例えば大手生保A社は、「お客様満足度」を把握し、その中長期的推移を発表することで、経営改善効果を測定する方針を提示している。
 金融庁は、金融事業者が顧客本位に業務を行う場合の取組手法を、一般の顧客にもわかりやすいよう、具体的で、かつ、KPIと明確に結びつける方針とすることを、強く期待している。しかし、銀行が公表しているKPIの場合、提供しているサービスや商品に係わる事項が多い一方、「利益相反管理」や「手数料等の明確化」、「業績評価体系」等に関する事項は少ないのが実情のようである。
 これに伴い、金融庁としては、金融事業者が現時点では不十分なKPI活用状況を改善し、自社が提供する商品のコストや顧客へのリターンを明確に把握・提示する態勢を構築するよう望んでおり、「適切なKPIの設定とその活用」は、金融業界における今後の重要課題になっていくと思われる。
 金融・保険業界においては、業務に関係するあらゆる要素がデジタル情報化する「デジタライゼーション」の加速、人口減少・高齢化の進展、低金利環境の長期化といった著しい環境変化が生じており、これに対応する金融行政の変化が必須となっている。例えば家計における安定的な資産形成、企業における持続的成長を通じた「国民の厚生の増大」をはかることが不可欠となった結果、金融庁は、いわば「金融育成庁」に変身して、その路線を強力に推進する方針を明確にしつつある。
 従って、保険業務の実施責任者は①貯蓄性商品(特に外貨建保険商品)の販売時における顧客への適切な情報提供、②自然災害等にかかる保険引受手法や資産運用の管理態勢の高度化、③持続可能なビジネスモデルの構築、④経営全般にわたるガバナンス機能の充実、等を求められており、KPIを活用した経営施策を長期的に展開していくことが必要だと認識されている。今後「KPIの活用による経営全般の見える化推進」が、保険会社・代理店の重要施策になってくることを常に意識し、経営にあたることが望まれる。(客員・石橋)

2019.03.12
契約者サービスの提供【主張】3月2集(生保版)

契約者サービスの提供
 標題は、人生100年時代と言われる状況下において、従来までの主契約・特約等による保障だけでなく、それに伴う関連サービスなどを含め、いかに付加価値を提供できるかが消費者の判断基準になり得ることから、掲げたものである。
 生保各社が発売する医療保障商品を例にすると、入院・手術等の給付金だけでなく、医師の紹介など相談対応を組み込んだサービス提供などを充実してきており、契約者にとって、いざという時に使い勝手の良い商品となっている。今後も創意工夫を発揮し、本来の保障内容とともに、契約者サービスで他社との差別化を図ることが消費者から選択される重要な鍵になろう。その意味で、契約者向けのサービスは決して疎かにできないものであり、ここでは、昨年末までに発表された特筆すべき3社のサービスについて考察する。
 1点目は、第一生命が昨年12月に発売したかんたん告知『認知症保険』のサービスである。商品の詳細は既に紹介されているため避けるが、認知症の予防・早期発見を踏まえたサービスや被保険者・家族の心のケアを含めたサービスは、高齢者人口の増加とりわけ高齢単身世帯を持つ家族にとって、安否確認に繋がるものであり、時宜に適ったサービスと言える。同社が提唱する、従来のプロテクション(保障)だけでなくプリベンション(予防・早期発見)までをカバーすることにより、健康寿命の延伸をもたらすものとなろう。
 2点目は、エヌエヌ生命が昨年12月20日に発表した『経営者死亡後の後継者支援サービス』である。“中小企業サポーター”を標榜する同社は、かねてより中小企業経営者向けの商品を提供し続け評価を得てきているが、今回のサービスは、その実績を踏まえた上で経営者の急逝により事業を引き継いだ後継者への的確な支援を行うものだ。事業が頓挫することなく継承・発展するような専門家によるアドバイスは、これも正鵠を射たサービスと言える。大企業に比べ、様々な面で足りない分野を抱える中小企業に対し、今回のサービス提供によって、当該企業が更に成長していく下支えとなることを期待したい。
 3点目は、日本生命がこの4月から提供することを明らかにした契約者向けシニアサービス『GranAge Star』である。このサービスは、専門的ノウハウを有するNPO法人が提供する「身元引受保証」「日常の生活支援」「任意後見」「葬儀や納骨等の亡くなった後の対応」に、「暮らしのサポートデスク」を付加した有償サービスとしている。今回のサービス提供は、高齢者に関わる諸課題の有力なソリューションの一つになるものと思われる。高齢層の増加が不可避な状況にある中で、保有契約者数の最も多い同社において、シニア契約者へのサービスが一層充実することは業界他社に及ぼす影響も少なくない。今後、サービス内容がどのように進展していくか注目していきたい。        (石原)

2019.03.05
「節税保険見直し」につき考える【主張】3月1集(生保版)

「節税保険見直し」につき考える

 二月の中旬のことである。新聞各紙に一斉に「節税保険販売停止が拡大」という趣旨の記事が掲載された。
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 主に中小企業経営者向けに節税効果がPRされ、販売が過熱した死亡定期保険について販売停止の動きが生命保険業界全体に拡がっている。こうした「節税保険」について国税庁は一三日、節税メリットを薄くする方針を各社に示し、日本生命など生保大手四社が販売停止。他の生保にも同様の動きが広がっている。ただ貴重な収益源とあって、今なお対応が未定の会社もある。
──二〇一九年二月一六日付、朝日新聞より
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 それにしても素早い対応ではある。まるで悪さをしたのが見つかったので、慌てて店仕舞いをするような感じの撤退風景である。
 国税庁が生保各社に対し、「節税メリットを薄くする」と通告するや、いわゆる「節税保険」を扱う主な生保一七社のうち、一三社が既に販売を停止したか、月内にも停止する予定であるというのだから、逃げ足が速いといわれても仕方があるまい。
 経営者向けのこの保険は、あくまで生命保険であるので、経営者の不慮の死亡時に、数億円という高額の保険金が受け取れるという商品である。とくに中小企業の場合、経営成果は、経営者の手腕に負うことが多いので、不慮の突然死への企業としての備えとして意義がある。
 しかし、月数十万円の保険料を全額経費扱いにできるため、利益を大幅に圧縮して節税できる。一定期間を経て中途解約すれば、支払済み保険料の大半が払い戻されるので、それを役員の退職金などに充てれば、その分も非課税になる。折からの好景気で黒字が増えた中小企業の節税に寄与するぴったりの保険として、人気を博して当然である。業界最大手が販売を開始するや、他の大手生保も一斉に追随した。
 国税庁が示した今回の見直し案は、返戻金が支払い済み保険料に対して五〇%を超える商品は、経費に算入できる範囲を制限するというものである。これに対し、招集された協会加盟四一社の担当者は一様に押し黙り、国税庁職員が「質問があれば何でも答える」と呼びかけたものの、質問する者は誰もいなかったという。
 「きれいごと」といわれるのを承知のうえであえていうと、生命保険の存在理由は、あくまで、不慮の死亡保障にある。とくに急成長の中小企業にとって、経営者の突然の死は大きなリスクになる。その保障がいかに大切であるか、生保関係者であれば誰でもわかることであり、営業では、それを堂々とお客に説ける営業職員教育の強化が必要であると考える。節税などは、二次的、三次的な付加的メリットに過ぎない。

2019.02.26
コンセッション方式-『水道方式入門』【主張】2月4集(生保版)

コンセッション方式―『水道方式入門』
―水道方式は、主として小学校における計算練習の方式である。それは子どもたちができるだけ少ない練習量で、できるだけ確実で、
永続的な計算力を身につけるように工夫されたものである(遠山啓・銀林浩編『新版水道方式入門』)
 一九六〇年代、数学者・遠山啓は小学生が算数に苦労する原因として「数の概念」を明治以来の「数え主義」により教えることに気付き「集合算」による四則演算を推奨した。この教育方法を「水道方式」と名付けた。
 水道の民営化・広域化を目的とする「水道法改正」について考えよう。水に恵まれている我が国だが、現在まで水資源開発に採算を考えず公的資金が投入してきたことによる。
 「人口減少に伴う水道料金収入の減収、水道施設の老朽化」に直面する自治体は財政面で厳しい局面を迎えている。
 その打開策として昨年国会で成立したのが「改正水道法」である。中身のひとつが「コンセッション(公共施設など運営権)方式」である。水道施設の所有権は自治体が保持したまま、運営権(つまり経営権)を民間事業者に売却できるとする。また自治体ごとに区分けしていた水道事業を広い地域で一体運営して不採算地域と採算地域を一体化することにより、大規模な事業運営ができるとして請け負った民間事業者は利益を生み出し易くなるという。
 改正案に基づくと水道料金値上げが必至であるが、運営権は民間企業に移るため地方議会の承認は不要である。また貧困による料金未納者には自治体が「日本国憲法第二十五条」に基づく条例により料金を免除するなど方策を施しているが、今後は営利事業である民間企業は聞く耳を持たないだろう。さらに海外では水道の民営化が広がる一方、水道料金の高騰や水質が悪化する問題が相次ぎ、近年は公営に戻す動き(再公営)が加速している。
 経済主体の自己利益追求が社会にとって良い結果をもたらすという前提が、ミクロ経済学の「契約理論」を発達させてきた。しかし公共事業においては当事者間の契約が不可能であるし、利用者は仕事を信頼により事業者に任せざるを得ない。ここでは自己利益を前提とする契約理論は成り立たない(岩井克人)
 混迷する金融市場における利用者と金融機関の取引に対して金融庁は「金融検査・監督の考え方と進め方」を提示している。
―競争原理がはたしてすべての時代を超えて
未來永劫にわたる人間の原理であったか、また、あるべきかどうかはすこぶる疑わしい
(遠山啓『教育思想としての競争原理』)
 遠山は七〇年代の教育全般への競争原理の導入に批判を強めながら、数学教育においては運動の力点を「たのしさ」へと移して行く。
遠山による算数の副読本、復刻版『さんすうだいすき(全十巻)』は今でも多くの読者を得ているようだ。        (客員・林)

2019.02.19
企業の新卒採用に関して【主張】2月3集(生保版)

企業の新卒採用に関して
 昨年秋、経団連は、「採用選考に関する指針」を廃止することを表明した。もともと、この指針は、経団連の会員企業に対して出されたものであるため、会員外の企業は、実際には相当早くから採用活動を行っていたし、会員企業であっても、選考という表現を使わないことによって、実質的な採用活動を指針より早く行っていた。
 採用を担当したことのある者としては、採用担当者の気持ちはよく解る。端的に言えば、競合企業が自社よりも先んじて採用活動を始めてしまったら、すぐにでも追随したくなる。現在のような売り手市場であればなおさらだ。このため、これまでのような指針があろうとなかろうと、採用のスケジュールは、毎年前倒しされていくことになる。そして、あまり極端に早まると、社会的な批判が高まり、是正のための力が働き、遅くなる。これまでの企業の採用を振り返ると、こうしたことの繰返しでしかない。
 今回は、政府が経団連の指針に変わるものを作ると報道されているが、経団連の会員企業以外も対象とされるので、これまでよりもルールを守る企業は増えるかもしれない。しかし、強制力を持った形では作れないので、守らない企業も出てこよう。
 このように考えると、今回の指針の廃止に伴う学生への影響は、多少の混乱は予想されるものの、それほど大きいとは思えない。あまり昨年とスケジュール上の変化をもたらしてほしくないだけだ。
 採用に関しては、学生の立場から見てこの指針以上に問題なことがある。第一は面接技法の問題だ。面接で最も難しいのは、学生の第一印象に左右されずに、必要な能力を有しているかを判断することだ、そのためには、適切な技術とその経験が必要である。しかし、応援に駆り出された社員はもちろんのこと、採用担当であっても、そのほとんどはそうした技術と経験を持っていない。このため、採用ミスは、不可避だ。このことは、学生からすると大きな問題だし、学生と企業のミスマッチの原因になっているとも考えられる。
 第二に、どのような人材が求められるのかということについて、社内の意思を統一してほしい。たとえば、経団連の中西会長は、大学での勉強を相当重視する旨の発言を繰り返ししているが、日立製作所の採用担当者は、ウェブサイトを見るかぎり決してそうは考えていないようだ。こうしたことは、学生たちに混乱をもたらすものでしかない。是非とも統一してほしい。そして一旦決めたら、しばらくはそれを変えないでほしい。また、どのような人材を求めているのかについて、具体的に示すとともに、実際にそのとおりの採用をしてほしい。
 これらのことについて改善ができれば、就職=採用活動は、より適切に行われよう。
(客員・宇野典明〔中央大学商学部教授〕)
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