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2019.06.04
政策の政治責任【主張】6月1集(生保版)

政策の政治責任
令和の時代が幕を開けた。西暦と和暦使用の論争はあるが、地質歴のように時代に名称があると容易に想いを馳せることができて個人的には好ましく思っている。ジュラ紀・白亜紀といえば恐竜を想い出すだろう。同じく昭和・平成は日本史の括りとしても、分化の括りとしても、時代の名称が醸し出す薫りを意識することができる。デジタル化すれば西暦で良いという意見もあろうが、時代を作るのは人が主役でなければならない。
 平成は、人為を超えた自然災害に見舞われたが、バブル崩壊、長期の経済不況など、良くも悪くも人が時代を作ってきたことを改めて強く意識せざるを得ない。そして、人々の生活に時の政策は大きく影響を与える。
 一例として人々の生死に関係し、民間保険の商品にも影響する医療政策を取り上げると、結果論であるが、政策の失敗、スピードの遅さ、無作為など思いつくことは多い。特に、優生保護法の元に強制不妊手術が実施された医療政策は、70年の時間を超えて政策の誤りを国が認めると言う、国策の汚点として重く受けとめなければならない。
 さて、現在の医療環境は様々な政策の積み重ねの賜物であり、世界に冠たる医療保険制度を維持できたが、医療の非効率性を示すデータは多く、OECD加盟国と比較して批判されてきた。今や、病院の配置、医療資源利用の適正化として、病院の統廃合は避けて通れない。しかし、政策速度は牛歩の状況である。
 すでに国立病院の統廃合は進んでいるが、病院の多くは民営であり政策に翻弄されて悪戦苦闘している。今年は、消費増税もあり、診療報酬制度と消費増税の狭間で小規模病院の経営は更に厳しさを増す。加えて働き方改革議論では、医師の使命感に支えられたサービス残業に対しても、きちんとドクターフィーを支払うことが時代の要請として認識された。しかし、その実現は人件費の面で、病院経営の厳しさをさらに増加させる。実際に、診療報酬ファクタリング(診療報酬担保借入)を、多くの病院が利用している事実は、医療基盤の先行きに根本的な不安を感じる。
 一方、多くの公費投入で存続している自治体病院は、公費負担医療の受け皿になっている事実もある。このような病院の存続は、市場原理や自由主義経済の視点だけで語ることはできない。過去の政策を総括し、私的財と社会インフラの両面で国民の生活に直結する医療政策を考える必要があろう。
 今夏の参院選では、各政党が令和時代初の国政政策を公表する。政策の失敗は、将来の選挙結果で政治責任をとれると開きなおる政治家もいる。しかし、政策は容易に事前の実証実験はできないからこそ、結果責任は重いのである。短期間では結果が評価されない政策があることも、強制不妊手術政策の教訓である。短期間で政党が統廃合され、政党を渡り歩く政治家を見るにつけ考えさせられる。
(客員・佐々木)

2019.05.22
銀行窓販の適正化を望む【主張】5月4集(生保版)

銀行窓販の適正化を望む
 周知のとおり、今月より新元号「令和」がスタートしている。新時代を迎えたことを機に、平成時代に積み残された課題の解決を図り、クリーンな状態で事業に邁進したいと願う産業界は多いものと思われる。
 標題は、去る2月開催の生保協会理事会における議題の1つに掲げられた「外貨建保険等に対する苦情対応」を踏まえて、考察するものである。
 外貨建保険の苦情は、先の稲垣協会長の日銀記者クラブでの会見において明らかにされたとおり、高齢化に伴い資産形成ニーズの高まりを受け、販売の急増とともに苦情が増えたこと、とりわけ高齢者からの申し出が多く「元本リスクの適切な説明を受けていなかった」ことなどが示された。このような実態を踏まえ、生保協会では、全国銀行協会と連携しマネープランガイドの雛形作成、募集補助資料作成、設計書への実質的な利回り表示を実施する。一方、銀行協会では、募集資料を活用した上で顧客への分かりやすい説明の充実や高齢者募集ルールの改善・実効的な運用に努めることとしている。
 銀行窓販の解禁以来、十数年になるが、販売実績が増えるとともに契約者(預金者)からの苦情も多くなっている。いままで国民生活センターで公表された苦情等の資料としては、以下のとおりである。
○高齢者に多い個人年金保険の銀行窓口販売 に関するトラブル(17年7月)
○個人年金保険の窓口販売に関するトラブル ―高齢者を中心に相談が倍増―(21年7月)
○銀行窓口で勧誘された一時払い終身保険に 関するトラブル―高齢者への不適切な勧誘 が急増中―(24年4月)
○保険商品の銀行窓口販売の全面解禁から10 年を迎えて―新たに外貨建て保険のトラブ ルも―(29年12月)
 同センターでは、資料公表の都度、両協会に対して販売の適正化を申し入れており、両協会としてもガイドライン作成や適正化への申し合わせを実施、その充実に努めてきたところである。しかしながら、販売現場においては、高齢顧客に対するリスク商品への説明不足や優良誤認などの苦情が鎮火するまでには至らず、いわば“仏作って魂入れず”という状況が続いていたのではないか。その証左として、29年12月にNHK『クローズアップ現代+』で放送された「金融商品の押し売り、銀行員からの“内部告発”」が挙げられる。
 今回の窓販適正化としては、これにより苦情が寄せられることのない、抜本的な態勢整備となることに期待したい。販売に携わる銀行員に対して、長引く低金利下にあって有利な商品の勧奨を否定するものではないが、顧客のニーズがどこにあるのかを見極めることが、何よりも先に求められるところだ。
 『平成に起きたトラブルは平成のうちに解決する』ことによって、新時代における適正な窓販事業の推進を望むものである。(石原)

2019.05.15
三井住友銀、ノルマ廃止に思うこと【主張】5月3集(生保版)

三井住友銀、ノルマ廃止に思うこと
 二〇一九年四月二四日付、日本経済新聞によると、三井住友銀行が、行員へのノルマを廃止し、これまでの評価基準を見直して、顧客の運用残高をどのくらい増やしたかを重視する方式に変更したといわれる。
 一般論であるが、銀行では本部が支店の販売目標を決める。数字を与えられた支店長は行員に商品ごとの販売目標を割り振り、行員はそれを自ら達成すべき目標、つまり、ノルマとして受け止め、その達成を目指して行動する営業のスタイルである。
 目標を上回ると、支店は「優良支店」として格付けされ、目標を達成した行員はそれに貢献したとして高い評価が与えられ、個人報酬にも反映される。このように、銀行は主要商品ごとに厳しい販売目標をノルマとして支店に課して、収益を上げてきたのである。
 三井住友銀行は、この支店の評価基準そのものを見直し、投資信託、保険、外貨預金など、運用商品の販売額を評価する項目を廃止し、顧客と信頼関係を築き、たとえば投信の運用残高がどのくらい増えたかが評価の対象として重視される。これまでは、期中に投信をどのくらい販売したかという結果数値を評価基準にしていたのである。
 CS(顧客満足度)主義が重視されて久しいが、売り手側にノルマ主義があると、どうしてもそこから遠ざかってしまうのである。企業が収益性の高い商品を目標を掲げて売るという姿勢からは、顧客の意向に沿う営業など、到底できないはずである。
 営業担当者からノルマを撤廃する──これは驚天動地の発想である。そんなことをすれば、売上高が減ってしまうと誰でも考える。CS主義は理念的にはわかるが、そういう理念で売上高が向上するとは考えられないからである。それを敢然と実行し、成功した企業がある。資生堂である。
 資生堂は、二〇一四年、BC(ビューティーコンサルタント)の販売ノルマを全廃し、BCの評価は、接客後に顧客に託されるはがきの返信を中心として、行う方式を採用したのである。前田新造社長(当時)の改革の一つである。この改革は、多くの役員が反対するなか実行され、現在実を結びつつある。
 この改革が、現在、顧客重視のビジネスを求める金融庁の強い意向を踏まえて、金融機関にも波及してきている。とくに、フィンテックが進行する銀行各社は、営業スタイルが激変しつつあるが、遂にそれが伝統のノルマの廃止にまで及んできたといえる。
 そうなると、現在でも営業職員による訪問営業体制を維持する伝統的生保会社に影響が及ぶのは必至である。訪問営業は、企業が営業プロセスを管理しにくい関係上、どうしても営業職員へのノルマ主義に陥りやすい。それだけに、生保各社としては、三井住友銀行のノルマ主義撤廃は衝撃的である。生保営業改革のときが迫っている。

2019.05.08
喫緊の課題となる金融リテラシー 【主張】5月2集(生保版)

喫緊の課題となる金融リテラシー 
 標題は、本年3月までに発表された生命保険に関する相談事例を踏まえたものである。ここでは、それらの事例を基に金融リテラシーの充実を考察することとしたい。
 その内容は、日本共済協会発行の『共済と保険』(2019年1月号・同2月号、各32~33頁)に掲載された「消費相談の窓口から」の、第10回『この保険、好きになれませんか?』~満期前の保険転換トラブル~及び第11回『保険と契約』。当該頁は、全国消費生活相談員協会の相談員が、相談者から寄せられた相談内容や対応結果、相談員の視点を紹介しているものである。
 このうち第10回は、契約満期前に転換した契約について、元の契約に戻したいとの相談である。記載された文面からは、保険会社側の対応には齟齬はないように思われ、最終的に相談員の説明に納得したことが記されているが、「相談員の視点」の中で『…転換するまでの過程で、相談者が本音が言えたなら、また、担当者も相談者の揺れる気持ちを汲み取ることができたなら、トラブルは起こらなかったかも知れません』と指摘している。
 相談者からの内容紹介のうち、20年満期契約の17年間保険料を払い続けてきた相談者は、保険会社にとって他の契約者と同様に大事な顧客の1人である。転換契約後に「損をした」との思いに至り、相談窓口を訪れたことになったものだが、「視点」にあるとおり契約者の思いを汲み取るコミュニケーションが如何に重要なことかが紹介されており、日々、顧客対応の業務に携わる者にとっては、是非目を通してもらいたい提言であろう。 なお、今回の件に関し、相談員から生命保険協会にアドバイスを求めたところ、的確な回答が寄せられ、それが『この保険、好きになれませんか?』とのタイトルに使用されている。同協会では、予てより消費相談員協会と同様、消費者からの相談対応機能を備えているが、担当者の業務に対する真摯な姿勢が窺われる一場面と言えよう。
 また、第11回は『保険と契約』。消費者から寄せられた2つの事例と対応、それに相談員の視点で構成されている。事例の詳細は当該頁に目を通して戴きたいが、「視点」において『…契約時には事業者の丁寧な説明が必要です。保険の場合、各会社の専門用語が難しいだけでなく、「保険料」と「保険金」「保険契約者」と「被保険者」等々、基礎用語さえ混同して誰のことかわからない、何がわからないのかわからないという状況も多く見受けられます。消費者がどこまで理解しているか確認しながら説明してほしいと思います』
と指摘されている。
 現在、生保協会では業界を挙げて金融リテラシーの充実に向け、様々な取組みを進めている。一方で、今なお前記のような実態に相談員が直面しているのであれば、早急な改善が課題として挙げられる。その対応に一刻の猶予もないものと思われる。   (石原)

2019.04.25
美しい日本語【主張】5月1集(生保版)

美しい日本語

 近頃は、暇に飽かせてテレビやネットで国会の中継を見る機会が多い。その際に特に気になるのが、敬語がやたらと連発されることである。
 何でも「丁寧な方が良い」と思っているのだろうか、質問に受け答えする大臣が自らの所管する業務を説明するのに、単純に「します」ではなく「させて頂く」と言い、短い答弁の間に不必要なほど多くの尊敬語・謙譲語・丁寧語をちりばめる・・なんとも締まりがない。それでも内容を伴った説明なら少しは許せるのだが、肝心の中身自体がスカスカなのである。
 答弁の大部分は官僚が書いた文章を単に読み上げているだけとは思うが、そうだとすると永田町と霞が関の周辺では「敬語が溢れるだけで中身が乏しい日本文」が蔓延していることになる。もちろん私は、単に国語力の低下を言っているわけではない。「言葉には魂が宿る」とも言われるが、何事であろうと政府は国民に対して諸事情を率直に語り理解を求める努力こそが必要であり重要なのである。そして過剰に敬語を使用するのは、その努力を怠っている実態をさらけるだけでなく、見せたくない素顔を厚化粧でごまかす下心も映しているようにも見えてくる。
 「年寄りの嫌味」と笑われるのを覚悟の上で申せば、過剰な敬語を用いた物言いは、残念ながら「品格に欠ける」と評価せざるをえない。米国の東部エスタブリッシュメントの間では、よく今日の社会では素朴な正義(justice)に代えて政治的正当性(political correct)が重要だと言われるが、これらは二者択一の関係ではなく両者を並び立たせる努力こそが今日社会のリーダーたる者の務めであろう。
 敬語を使いまくって国民に媚びることは不要である。丁寧に説明することは大切ではあるが、中身のないフレーズを何度も繰り返すことは決して丁寧とは言わず、反対に失礼千万な所作と認識すべきである。そうではなく立場上から得た情報を基に熟考し、それを明解に整理して「美しい日本語」を用いて国民に伝えてもらいたい。ここで「美しい日本語」とは、何よりも中身が真実に裏打ちされていることであり、加えて簡潔にして的を射た表現のことである。
 
 そういえば、第一次の安倍内閣での選挙スローガンか何かに「美しい日本へ」があったのを思い出す。今その首相の口からは、原発被災や沖縄基地の問題に関して、口癖のように「丁寧に説明」との言葉や「寄り添う」なんて表現も聞かされる。その影響を受けたのか、今では全閣僚だけでなく陣笠議員までもが、同じような表現で口を揃える。ただ「丁寧に説明」「寄り添う」などと言われても、中身が伴わなければ、国民の気持ちは返って白けてしまうだけである。
 (客員:岡本)

2019.04.18
七〇歳まで働く【主張】4月4集(生保版)

七〇歳まで働く
 最近、七〇歳まで働くという話が出てきている。七〇歳の平均余命は、男性で一五年強、女性で二〇年強である。また、古いデータであるが、六五歳の健康余命は、男性で一五年強、女性で一八年弱である。これらのデータから見る限り、七〇歳まで働くということは、十分ありえるだろう。
 私は、七〇歳まで仕事があるのは、良いことだと思っていた。私が七〇歳まで仕事を続けることができたのは、率直なところ、健康に恵まれていただけではなく、大学教員としての教育と研究には大きなやりがいがあり、充実していたし、仕事の相当部分を自分の裁量で決めることができる内容であり、給与面でも六〇歳以前と変わらなかったからこそである。しかし、六五歳になったころから、これが普通の仕事であれば続けることは難しかったと感じていた。もちろん、こうした感じ方は、人によって大きく異なろう。
 こうした中で太陽生命が導入した六五歳定年制度・七〇歳までの継続雇用制度が注目される。これは、これまでの六〇歳定年を五年間延長し、特別職員制度と役職定年制度を廃止し、継続雇用の期間を六五歳から七〇歳までとしたことによって、平均して一五%以上の生涯賃金を向上させたという制度である。
 もともと、七〇歳まで働くにあたっては、健康、体力、気力と仕事の内容が従業員にやりがいを持たせるものであることが求められよう。健康や体力、気力の必要性はいうまでもない。健康と体力を維持するには、若いうちから十分な健康管理と体力の維持を図り、企業もそれを十分にサポートする必要があろう。また、気力については、仕事の内容などに大きく左右されよう。
 太陽生命の制度は、果たして従業員のやりがいを維持できるであろうか。六五歳までは、これまでの五七歳以前と同程度の水準の給与が支払われ、企業が認めた場合には役職に登用されることなどを考えると、一定程度のやりがいは維持されよう。しかし、六五歳以降の継続雇用では、これまでの継続雇用と変わらないため、やりがいが維持されるとはなかなか思えない。もともと継続雇用で低い給与しか払えないというのは、従業員のキャリア開発に問題があったとも考えられる。六五歳以降でも十分稼げるような仕事のできる従業員を育て、組織もそうした高齢者の存在を前提にしなければならないだろう。
 太陽生命のこの制度は、なかなか素晴らしいものではあるが、従業員のスキルアップによって継続雇用の間の年収をさらに引き上げること、六五歳より前からも継続雇用の適用を認めることなどによって、より素晴らしい制度になろう。
(客員・宇野)

2019.04.12
統計(数)学【主張】4月3集(生保版)

統計(数)学

―「統計は豊かな暮らしのアドバイザー」、
(総務省「統計の日」標語。昭和五〇年受賞作品)
 我が国では中央官庁を始めとして、統計の専門家が不足するという。文科省は「学習指導要領(平成二九年・三〇年改訂)」において小中高を通じた統計教育の充実を強調し「新たに取り組むこと、これからも重視すること」として「データを分析し、課題を解決するための統計教育を充実します」と期待を込める。
 小学校では「資料を分類整理し、表やグラフを用いて、特徴を調べたりする」「資料の平
均や散らばりを調べ、統計的に考察する」。 
 中学校では「収集した資料の代表値を算定し、さらには確率についての理解を深める」「統計的推測により与えられた母集団の傾向が読み取れることを理解できるようにする」。
 高校では「確率について理解し、不確定な事象を説明する」「統計的推測により、母集団
の傾向を説明する」と力強く締め括る。
 大学教育では一般教育科目の重要科目として文系・理系を問わず「統計学」の選択を推奨している。自然科学はもとより、社会科学、人文科学、あらゆる学問/科学研究では資料を分類し、実験を繰り返し、帰納的に因果関係を発見する。そこでは数学の一分野としての統計数学を道具とする。
 数学は公理に始まり推論を加えることにより、演繹的に定理を導きだす唯一の科学である。最も数学に近い物理学でも公理ではなく原理に始まり、実験を繰り返して得られた統計数値により、定理ではなく法則を導き出す。
 今日、我が国では、独立した統計学部を持つ大学は少ない。数学の分野では「応用数学(統計学、数理ファイナンス、ゲーム理論等々)」がある。統計学は統計数学を基礎として、統計的推測の判断において、データの選択、母集団の範囲決定基準をつけ加える。
 「応用数学」は経済学部に講座を持つことが多い。経済学と統計学の接点は、ケインズ経済学に基礎を置き七〇年代に発展したマクロ経済学の一分野である「時系列分析による計量経済学」での応用が大きい。
 統計的推測においては、恣意性を排除できない。深刻な例を挙げよう。僅か三年九ケ月
のうちに八四六回の「大本営発表」。六〇年代の「所得倍増計画」。所得は倍増したが、物価も倍増。五〇年後の今日では、物価が上昇すると所得が上昇するらしい。英国EU離脱強硬派(元外相ボリス・ジョンソン)による「毎週五百億円のEU分担金の節減により、NHS(国家医療制度)の負担が軽減される」という(後日虚偽と判明した)キャンペーン。
―「活かせ統計、未来の指針」(同平成三〇年受賞作品)
 総務省は二〇一九年統計の日(一〇月一八日)標語を募集したものの、社会保険労務士試験の参考書(平成最後の)『厚生労働白書三〇年版』は未だに発行されていない(客員林)

2019.04.08
示唆に富む指摘と提言【主張】4月2集(生保版)

示唆に富む指摘と提言
 生保協会は去る2月25日、「創立110周年記念式典」を開催した。この式典は、人生100年時代と言われる中で、様々な社会課題の解決等に向け、生保業界として果たすべき役割について情報発信を行ったものである。ここでは、登壇者からの幾つかの指摘や提言につき考察することとしたい。
 冒頭、稲垣協会長による主催挨拶の中で生保業界として社会課題を解決し更なる飛躍を遂げるためには3つのP(Preparedness,Pro-tection,Prevention)の必要性を説き、それぞれの具体的施策によって、「安心と希望に満ちた未来を切り開く」ことを描いていきたいとの決意表明は、少子高齢化の進行や社会保障給付費の増加、疾病構造の変化する状況となっても、一人ひとりの契約者の人生に寄り添う業界だからこそ実現できるものであろう。会社の枠を越え、業界一丸となって国民の期待に応えてもらいたいところだ。
 来賓の遠藤金融庁長官は、業界に期待することとして、経営環境の変化への対応と顧客本位の業務運営を追求し持続可能なビジネスモデル構築、若年層への金融リテラシー向上と独自性の発揮を挙げた。前者については、全加盟会社がその対応に取り組むとともに定着度を示す成果指標公表に努めているが、特に高齢顧客への外貨建保険販売において、信頼を損なうことのないよう早急な仕組み作りが求められる。後者については健康寿命延伸を踏まえた健康増進型保険の提供など“生保ならでは”の商品・サービスが誕生しているが、その動向が注目される。
 木村副会長による金融リテラシー教育推進の取組み紹介は、遠藤長官の期待した1つに応えた内容である。これまでの生保協会のイメージを刷新した、いわば若年層がくいつき易い動画コンテンツとして、多くの若者からの「いいね!」とともに、「保障」の重要さに気付くことを望みたい。
 2つのパネルディスカッション「医療介護分野における国民と生命保険の将来」および「Society5.0における生命保険の役割」では、それぞれ斯界の有識者をパネリストに迎え、様々な角度からの指摘・提言がなされた。
 このうち、社会保障制度がどう変化しようとも、その補完産業としての役割発揮は不変ということだ。殊に介護保障や在宅医療の提供は一層、需要が見込まれる分野であることから、その対応に万全を期して欲しい。また、情報技術革新が進展する社会で、契約者等の個人データの民間利活用は、取扱いに関わる消費者代表からの懸念に対して如何に応えるか。その上で、契約者の承諾を前提に新たな商品・サービスの結実に期待したい。
 清水副会長による閉会挨拶で、高齢化・長寿化の進む中、生保会社への期待・役割の大きさに言及、その期待に応えるために顧客や行政、専門家との対話・議論の積み重ねが重要と語ったが、その実現に向けた業界全体での行動がより一層必要となろう。 (石原)

2019.04.01
「国際線機長の危機対応力」を読む【主張】4月1集(生保版)

「国際線機長の危機対応力」を読む
 3月にエチオピアで墜落事故を起こしたボーイングの同型機が各地で運航停止になった。本稿の執筆時点で詳しい原因はわかっていないが、同機に搭載された自動操縦装置が何らかの影響を及ぼしたとの指摘がある。
 ボーイングとエアバスでは自動操縦の設計思想が異なるとされてきた。国土交通省の資料によると、エアバスは人為的ミスを防ぐ観点からパイロットよりもコンピュータの制御を優先する設計思想なのに対し、ボーイングの考え方は、コンピュータでは判断できない極限状態ではパイロットの制御を優先するというものだ。いずれであっても現代の飛行機はパイロットの「腕」で飛ばすものではなく、パイロットが自動操縦装置を使って飛行するものである。つまり、操縦技術よりも、複雑なシステムを動かすオペレーターとしての役割が重要となっている。
 それではパイロットに求められる資質とは何か。PHP新書「国際線機長の危機対応力」(横田友宏著)によると、「飛行機の操縦とは、未来を変えるためにいま行動すること」であるそうだ。いま起きている事象を見て、それに対処するだけの人間ではダメで、「まだ事実が事実としての実態を持たない、兆しの段階でそれを捕まえ、その兆しがいかなるものに発展するかを見極め、その兆しに対応するために様々な対応を行っておく」(本書より引用。以下同じ)。しかも、時間的に制約があり、かつ、情報の一部しか知りえない状況下で、意思決定をしなければならない。これは企業のリスクマネジャー、あるいは経営者にも通じるところがあるように思える。
 教官として何人もの機長を育てた著者がパイロットに求める要件は非常に厳しい。そもそも最初に出てくるのが、「パイロットの資質を持たない訓練生はパイロットにさせない」である。そして、「機長は単なる操縦士ではない。機長はフライトというプロジェクトを成功に導くためのプロジェクトマネージャーでなければならない」「機長として大事なのは『自我の抹消』である。(中略)機長は一切のとらわれを離れ、気象状態と管制官の指示やほかの飛行機の流れ、飛行機の状態だけを考えなければならない」「機長は、猛々しいライオンであってはならない。機長は長い耳を持つ、臆病なウサギでなければならない」と続く。余計な雑念を持たず、チームのなかでリーダーシップを発揮する臆病なウサギに、あなたはなれるだろうか。
 次のような記述も耳が痛い。「うまくいかない原因を自分以外の周りの責任にして自分は変わろうとしない人間は、絶対に機長にはなれない」「隣の教官やチェッカーがどう考えているかばかり気にしている副操縦士も、機長にはなれない」。
 本書はパイロットという特殊な専門職の話を取り扱っているが、保険業界人にとっても、専門職としてのあり方や、マニュアル化するのが難しい「考え方」「哲学」の伝承を考えるうえで、大いに参考になりそうだ。
              (客員・植村)

2019.03.25
健康寿命延伸と世代交代【主張】3月4集(生保版)

健康寿命延伸と世代交代
 NHK番組「老後破産、長寿という悪夢」が2014年に放映され、長生きが社会問題化している。人類が望んできた長寿が、生きるためのリスクになるとは、誰が予想できたのであろうか。国は、問題解決策として健康寿命の延伸と生涯現役社会を掲げ、「Productive Agingの実現」を目指している。
 一方、寿命や老化は、社会学的にも生物学的な面でも関心が高く古くから研究者が取り組んできた。ヒトは、加齢と並行して老化が進み、若い時期に生殖能力が高く、生殖年齢が終っても、長期間生存する特徴がある。このような特徴は生物種で大きく異なっている。
 ゲノム科学の進展は、この分野にも新しい多くの知見をもたらしている。サーチュイン遺伝子や細胞老化などの研究は大きな成果をあげ、今後期待される研究領域である。中でも重要な成果としては、寿命を延伸することは、老化病を克服することと強く関係しているのが分かったことである。逆に老化病を克服すれば健康寿命の延伸につながるので、結局老化病の対策は、健康寿命と生存寿命の両者の延伸をもたらすのである。できるだけ、労働生産に係わる期間を伸ばし、生涯現役社会の実現と、介護の手間や医療費負担が発生する期間が短縮し、人が「ピンピンころり」で終末を迎える社会の実現は、国と国民が一致して望む点である。
 さて、健康寿命や生存寿命の延伸と共に、はたしてヒトが生きられる上限の限界寿命が、延伸するのかは分かっていない。限界寿命が延伸すれば、保険制度の根幹に関係する。2016年科学雑誌Natureに、生物には限界寿命があり、種特異的に固定されているという内容が報告された(ゲノム科学の進展は報告に含まれていない)。ヒトでは115歳前後に限界寿命が固定されている報告である。どのように健康寿命を延伸させても人は老化の結果、死を迎えるのである。すなわち老化は、ヒトの生命機構にシステム的に組み込まれ進化してきたのである。
 しかし、個体の生存にとって不利な老化機構の存在は、これまでの進化論とは対立する。最近の研究では、老化は個体の生存より集団の継続にとって重要であり、集団の世代交代に必要な機構であるという。また、個体の利己的な生存を調節し、集団の存在に危機が及ばないようにしているのである(集英社、ミッテルドルフの著書参照)。では、国民集団からすると国策の評価はどうであろうか。
 直面する社会的課題の克服に、健康寿命延伸と生涯現役社会実現の目標は妥当だが、一部の集団にだけ効果が集中しない制度設計を忘れてはならない。また世代交代が円滑かつ効率的に進む仕組みが、同時に担保されていなければならない。企業における定年延長と役職交代のセットに限らず、社会全体の世代交代を円滑に進ませる仕組みを検討することも、生物の進化論からは必要なのであろう。   (客員・佐々木)
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