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2018.01.11
温室効果ガス―『グスコーブドリの伝記』

【主張】1月2集
-ところが六月もはじめになって、まだ黄いろなオリザの苗や、芽を出さない木を見ますと、ブドリはいても立ってもいられませんでした(宮沢賢治著『グスコーブドリの伝記』)
 昭和七年(一九三二年)、農学者/童話作家の宮沢賢治は死の前年、東北地方の冷害を題材に本作品を雑誌『児童文学』に発表した。
 昭和十一年勃発の二・二六事件、陸軍上層部は「高橋(放漫)財政」の「出口戦略」である軍縮に反発して、東北大飢饉に無策な政府に憤る青年将校を使嗾し、叛乱を起こした。
 世界を分断する難民問題。先進国、途上国を問わず、垂直的には、新自由主義の蔓延を原因とする経済格差、また水平的には、自然破壊によるアフリカ、南アジアの旱魃/飢饉を原因とする環境格差を生じている。さらに
宗教/民族紛争に大国の介入が複雑に絡んで混乱に輪をかける(ナオミ・クライン)。
 世界の難民は総計六千万人に及ぶし、環境(気候)難民は二千万人に達する(国連)。皮肉にも、かつての植民地から旧宗主国に押し寄せる大量の難民こそ、近代西欧文明に対する地球の「しっぺ返し」と言えるだろう。
 災害大国日本でも記録的な豪雨、スーパー台風の惧れなど、地球温暖化による海面気温上昇がもたらす深刻な災害が相次いでいる。
 国際的な異常気象への対応として「COP(国連気候変動枠組条約締結国会議)」が開催されてきたが、参加国の政治/経済的思惑もあり、紆余曲折を辿っている。「冬があるのだから気候変動はでたらめだ(ドナルド・トランプ)」等と気候変動を否定する声もある。
 ただ「IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)」は科学/技術的に夏期の異常高温、冬期の異常低温など人為起源による気候変動に関する知見を積み重ねていて、これを緩和する対策をも包括的に研究/提案している(日本気象学会等『地球温暖化』)。
 米加のアクチュアリー会(保険/年金数理の職能/学術団体)は科学的に気候指数の開発を進めているという(ニッセイ基礎研)。
 過去の気温、降水量、風力また海水面の観測値から、其々の月別平均値とそれからの乖離度を算出する。保険事業での活用を目的として異常気象と経済損失/人的損失との相関関係を表す「気候リスク指数」を分析する。
 我が国の保険法では、自然災害を保険者の支払免責事項とはしていない。異常気象の発生による環境災害は地震と共に保険経営上のリスクとして一層の研究/対応が必要となる。
―火山が、いま爆発したら、炭酸ガスは上層の風にまじって地球全体を包むだろう。そして、地球全体を平均で五度ぐらい暖かくするだろう(『グスコーブドリの伝記』)
 ブドリは身を挺して火山を誘爆させ地域の温暖化を図る。スウェーデンの物理化学者、ノーベル化学賞受賞者スヴァンテ・アレニウスの温室効果ガスに関する論文(一八九六年発表)を賢治は知っていたのだろう(客員・林)

2017.06.22
「バーチャル・リアリティ」で先進医療情報提供

【週間の動き】6月4集(生保版)

 三井住友海上あいおい生命は2017年5月22日、再生したバーチャル・リアリティ(仮想現
実、以下VR)映像を利用した情報の提供を開始する、と発表した。
 初回提供として、ガンの先進医療技術のひとつである粒子線治療を行う医療機関の施設見学を
仮想体験できる映像を同社社員・代理店を通じ顧客に提供し、普段目にすることのない最先端
の医療施設を実際に訪れたような体験をしてもらうことができる。VRで先進医療施設に関する
情報提供をするのは、国内生命保険会社では初めてとなる。

1.初回提供の内容
・映像内容:粒子線治療を行う医療機関の医療施設と、隣接する宿泊施設を360度パノラマ
映像で紹介。粒子線治療とは、ガンの放射線治療のひとつで、水素や炭素の原子核といったミ
クロの粒子を利用した先進医療。身体的な負担が少なく、外科的手術が困難な場合や高齢者にも
比較的容易に治療できる。1回の治療 時間も15~30 分程度と短く、 入院せずに外来での治
療が可能。
・撮影協力:メディポリス国際陽子線治療センター(鹿児島県指宿市)2011年1月、九州
初の粒子線治療専門施設として陽子線によるガン治療を開始。ガンに対する根本的、かつ身体に
やさしいガン治療の実践を通して、国内外のガン患者のQOL(生活の質)向上に大きく寄与す
ることを目的としている。同社は、2017年5月8日に母体である一般社団法人メディポリス
医学研究所と「ガン医療の理解促進に向けた連携と協力に関する協定」を締結している。
・視聴方法:専用の簡易型HMD(ヘッドマウントディスプレイ)「VRscope R」にスマ
ートフォンをセットして鑑賞。「VRscope R」 は、凸版印刷㈱が独自開発した簡易
HMD。スマートフォンにダウンロードしたVR映像を手軽に、立体感・臨場感あふれた映像で
仮想体験できる。
2.今後について
 同社では、日々進化する医療情報をわかりやすく伝え、「正しく知ること」の手伝いをするこ
とも、生保会社の社会的使命の一つと考え、さまざまな最先端の医療に関する情報提供・啓発
活動に積極的に取り組んでいる。
 ガン治療についても、医療技術の進歩に伴い多様化しており、先進医療を受けるガン患者数は
増えている現状である。粒子線治療を行う医療機関の医療施設を顧客により分かりやすく案内し
臨場感を持って知ってもらうことは、治療・施設選択の一助となるとともに、顧客のさらなる
安心につながると考えている。
 今後は、介護や障害等の疑似体験やガンが転移する仕組みのアニメーション解説等、さまざま
なVR映像を追加し、健康や医療について、より顧客に理解を深めてもらうようなツールの提供
を検討していく。

2017.06.01
保険会社における最新技術の導入について

【オピニオン】6月1集(生保版)

菅沼 重幸氏(談)
(オリックス生命保険常務執行役員IT本部管掌)

 当社では次世代の仮想化IT基盤として、近年注目を集めている『ハイパーコンバージド
インフラストラクチャ』(HCI)を2015年より導入、急伸するビジネスを支える基幹業務基盤
として活用しています。IT基盤の仮想化は、システムが変化に俊敏に応えるための定石で
す。従来、その効果を最大化するには、ストレージやサーバ、仮想化ソフトウェア等を大
規模に調達の上、構築と運用はノウハウを有するITベンダの支援が不可欠でした。HCIは、
ソフトウェアを駆使して汎用のサーバ機器を組み合わせるだけで高度な仮想化IT基盤を構
築できる技術です。サーバ数台程度の小規模の利用から、数百台まで大規模に拡張するこ
とが可能です。
 当社では中長期かつ総合的な視点に立ったIT戦略を毎年策定(改定)しています。2014年
当時、重点施策の一つとして掲げたのが、変化への俊敏な対応の実現と中長期コスト削減
の両立でした。業務要件ごとに開発しサイロ状態にあったシステムをサービス、データ、
インフラ等の階層別に構造改革するというものです。この当社のIT戦略の期待に合致した
技術がHCIでした。当時、国内金融機関においてHCIによる基幹業務基盤の導入実績は皆無
でしたが、実現できるベネフィットに加え、システムを自らの手に取り戻す好機(グッド
リスク)とも評価、早期の採用に至りました。
 AI技術が急速に進化し、デジタル変革の重要性が叫ばれる昨今、それを主導すべきITが
前例踏襲主義であっては、急伸するビジネスの期待には応えられません。先端技術の優劣
を見極める「目利き力」と、クイックに時宜にかなった活用を実現する「実行力」が今後
より一層重要となります。加えて、長期の契約を取扱う生命保険会社にとっては、技術の
取捨選択に長期的視点が欠かせません。本年当社では契約管理システムの将来像を20年先
まで見据え、システムの近代化に着手しました。今後も短期、長期双方の視点からIT戦略
を推進し、当社の競争優位確立への貢献を目指します。

2017.05.18
事業量目標達成を目指し、力を結集

【オピニオン】5月3集(生保版)

市村幸太郎氏(述)
(JA共済連経営管理委員会会長)

 平成28年度の普及推進結果については、推進総合目標は6年連続、重点施策目標は7年連続で
みごとに全国目標を達成することができました。
 また、4年ぶりに全地区目標達成という輝かしい実績を収めることができました。
 特に、平成28年度は、熊本地震にかかる損害調査や支払業務に従事しながらの目標達成であり
改めまして、JA役職員の皆さま、そして、ここにお集まりの本部長をはじめ連合会職員の皆さ
まのご尽力に対し、こころより感謝と敬意を表します。
 平成29年度は、「JA共済3か年計画」の中間年度として、3か年計画で掲げた各種施策の達
成に大きな影響を及ぼす重要な年度であり、初年度の達成状況や課題を踏まえ、取り組む必要が
あります。
 事業推進においては、「世帯に深く地域に広い推進活動」の確立に向けて「全組合員への訪問
・ご案内による接点強化と保障拡充」、「万一保障・生存保障の拡充に向けた保障性仕組みの取
組強化」、「平成29年4月実施の仕組み改訂を活用した次世代対策と保障拡充」を着実に展開し
ていく必要があります。
 JA共済をとりまく状況は大変厳しいものでありますが、我々には、いかなる事業環境下にあ
っても、最良の保障とサービスを提供するとともに永続的に共済責任を全うする使命があります。
 今後も、JA共済の使命を果たすべく、本日の進発式を契機に、組合員・利用者のニーズに沿
った推進活動を強力に展開するとともに、平成29年度の事業量目標達成を目指し、全本部の力を
結集し総力を上げて取り組んでいくことをお願いいたします。
 結びに、JA共済事業の益々の発展と、本日ご参集の皆さんのご健勝とご活躍を心よりお祈り
し進発式の挨拶といたします。

(JA共済 全国普及推進 進発式での挨拶から)

2017.05.11
ローマ帝国衰亡史―BIS規制

【主張】5月2集(生保版)

 一八世紀英国の歴史家E・ギボン、二世紀の五賢帝時代の最盛期に始まり、一五世紀のコンスタ
ンティノープル陥落までの『ローマ帝国衰亡史』を雄渾な筆致により著す。
 ところでバーゼル合意(BIS規制)の変遷を学ぼう。ヴェトナム戦争終結後の経済疲弊により
米国は変動相場制へと移行する。米欧銀行は為替投機を巡り相次いで破綻した。
 国際金融の秩序を目的とするバーゼル銀行監督委員会(BCBS)は、一九八八年、国際業務を
行う銀行について信用リスク、市場リスクを担保する自己資本比率規制を定めた。初代BIS
規制(バーゼルⅠ)である。
 米ソのアフガン紛争を契機として東西冷戦の終結を見る。世界経済は多幸症状態に陥り、金融
規制緩和(金融ビッグバン)に沸き立つ。米国では大恐慌時に制定された銀行・証券の分離を定めた
「グラス・スティーガル法」を廃止、金融機関相互の乗り入れを可能とする「グラム・リーチ・
ブライリー法」を制定。
 その結果、肥大化したデリバティブ市場に多くの蹉跌を見る。危機意識をもつBCBSはオペ
レーショナル・リスクをリスク資産に算入する「バーゼルⅡ」を制定(二〇〇四年)。
 ところが「テロとの戦い」勃発、米国における戦争濫費は世界経済に不況を招来する。 
 押っ取り刀の金融緩和は、不動産バブルを発生。さらには病的に発達した「金融工学」の粋を
凝らしたサブプライム・ローン、債務担保証券、クレジット・デリバティブ等の連鎖的崩壊により
リーマン危機を呼び起こす。
 ここに流動性比率などに重点を置く「バーゼルⅢ」を急遽制定(二〇一〇年)したもののマクロ経
済動向、保護主義の台頭など規制を緩和する動きもあり、最終合意には至らない。
 米国発「戦争蕩尽→経済不況→金融緩和→金融危機勃発→BIS規制導入/改定」の悪循環こそ
荒廃/賭場化する国際金融の混乱に対する「泥縄」的な規制強化の「衰亡史」といえる。
 米国の現政権は、軍備拡張、また前政権による金融制度改革法「ドッド・フランク法」の骨抜き
宣言を行う。防衛産業、ウォール街の出番となる。先進国が財政政策によるソブリン・リスクに脅
える今日、杞憂で終わればよいが、三度あることは四度ある。異次元ともいうべき金融恐慌の惧れ
を否定できない。
 三七八年、ローマ帝国が大敗北したアドリアノーブルの戦いから四〇九年、ブリテン島(現在の
英国)の支配権喪失までの僅か三〇年で帝国は事実上終焉したという(南川高志)。
 原因は広大な辺境における諸民族の「ローマ人」なる自己認識の欠如である。EU域内での
「ヨーロッパ人」の曖昧さが、ヨーロッパと距離を置く英国のEU離脱を導いた。
 金融市場における国際協調の証しとしての「BIS規制」。「バーゼルⅠ」から三〇年後の
今日、来るべき「裁きの日」にも「蟷螂乃斧(『荘子』人間世篇)」に留まるのか。

(客員・林)
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