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2017.02.15
真の顧客本位の業務運営を

【主張】2月3集(生保版)

 金融庁は12月下旬に公表した金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「国民の安定的な資産形成に向けた取組みと市場・取引所を巡る制度整備について」を踏まえ、1月19日に「顧客本位の業務運営に関する原則(案)」を公表した。ここでは、金融商品の販売・助言・開発を行う金融事業者の取組みに対して考察する。
 金融庁の提示した7原則は、①顧客本位の業務運営に係る方針の策定・公表、②顧客の最善の利益の追求、③利益相反の適切な管理、④手数料等の明確化、⑤重要な情報の分かりやすい提供、⑥顧客にふさわしいサービスの提供、⑦従業員に対する適切な動機づけの枠組み等、が列記されている。
 今回の提言は、前記報告書の「はじめに」にあるように、1700兆円を超える家計金融資産のうち、米英に比べ株式・投信信託等の割合が低く安定的な資産形成が図られているとは言い難い状況にあることを踏まえて、市場ワーキング・グループでの審議を経て取りまとめられたものである。
 提言を最も真摯に受け止めなければならない金融事業者としては、株式・投資信託等の商品をメインに販売している銀行・証券及び投資信託業界であろう。昨年10月27日号本欄「顧客本位の業務運営」でも記しているが、昨年9月公表の『金融レポート』での投資信託について、「販売額や販売手数料等の収益は拡大を続ける一方、残高は伸びていない」との指摘が現状を物語っていると言える。そこでは、手数料稼ぎを目的とした短期売買などの販売が繰り返されているといっても過言ではない。この指摘を踏まえて、事業者としては自らの収益拡大に走ることなく7原則を確実に実施する、真の意味での顧客本位の業務運営に努めることが焦眉の急である。
 先の報告書には、顧客本位の業務運営の確立・定着させていく方策として①金融事業者の取組みの「見える化」、②顧客の主体的な行動、③顧客にアドバイス等を行う担い手の多様化、④当局の役割、を掲げている。
 現在に至るまで、家計金融資産の過半数を預貯金で占めているのは、リスク性資産とは違う元本保証性商品だからである。これは、急激な経済情勢の変動に際して、毀損することなく保有していたいとの多くの国民の思いが表れたものだ。その割合を削減して、株式・投資信託等への分散投資を如何に図るか―市井の人々がリスクを取るような商品を購入するには、幼少期からの投資教育が必須であり、自己責任意識をいかに醸成していくかが課題となろう。このような経験を積むことのない者にとって、「貯蓄から投資へ」と声高に叫ばれたとしても“笛吹けど踊らず”という姿勢が続くものと考えられる。
 近年、中等教育段階での投資教育に注力する学校が増えているという。これを一層拡充するとともに、顧客の中・長期的視点での資産配分に対して的確な助言を行う機関の構築が早急に求められる。       (石原)

2017.02.09
西武ドームネーミングライツを取得

【オピニオン】2月2集(生保版)
谷貝 淳 氏(述)
(メットライフ生命保険株式会社 執行役専務チーフカスタマーマーケティングオフィサー)
 
 今回のネーミングライツ取得にあたり、当社のビジネス、企業理念といろいろな意味で親和性が
あると考えています。
 まず、野球というスポーツの持つフェアプレー精神です。保険ビジネスも信頼が大事です。特に
保険は、お客様から保険料をいただき始める時に対価をお渡しすることが同時には行われません。
お客様から見ると、保険料を5年、10年、15年と払い続け、遠い将来に保険会社から対価をいた
だくという関係になります。そういう関係では、信頼が重要になり、私どもはビジネスにおいて、
常にフェアプレーを重視していきたいと思っています。
 2つ目が野球の持つチームワークという精神です。私どもは現在、世界50ヵ国でビジネスをし
ているグローバルカンパニーです。多くの国でビジネスをしている強みを活かすためには、それぞ
れの国で私どもが知り得た知見を共有し、ノウハウを互いにシェアしあって、グローバルにおいて
さらに強い企業を目指すという考えから、チームワークを重要視しています。そういう意味で、野
球のチームワークは私どもが目指しているものと一致するものがあります。
 また、私どもが商品をお客様にお届けする時に様々な代理店様や銀行様を通じて商品をご案内し
ていますが、販売に携わってくださるパートナーの方々とのチームワークも重要です。
 3つ目のヘルス&ウェルネスは、野球はプレーする方も観戦する方も心身共に健康に寄与する
スポーツと思っております。私どもの目指すヘルス&ウェルネスとも一致しております。
 今回、埼玉西部ライオンズ様のご厚意によって貴重なネーミングライツの機会をいただくことが
できました。私どものブランド名「メットライフドーム」を掲げさせていただくことは光栄に思
っております。
  (1月16日の記者発表会での説明より要約)

2017.02.02
行動経済学と保険:アクチュアリーの視点から

【オピニオン】2月2集(生保版)

ジャッキー・ワッサナー氏(談)
(RGA再保険会社日本支店 チーフマーケティングオフィサー)

 消費者行動における意思決定プロセスと保険ビジネスのオペレーションとそれがどのように関わっているかを理解する重要性が増しています。保険を購入する際、商品を調査・分析するのが合理的な消費者行動ですが、先入観や偏見によって非合理的な行動がしばしばみられます。
 自信過剰は、自分の知識を過大評価しリスクを過小評価する傾向があり、実際それで保険を買わない人も多いと言えます。統計的には不可能ですが、大半の人が自分は平均を上回るドライバーだと思っているため、運転マナー等を計測するデバイスを装着してもらい、良い運転をする人に保険料の割引を提供する自動車保険は、自信過剰に目をつけた賢い戦略です。
 親近効果は、最新の情報が印象に残るため過剰に重視する傾向です。優先効果と中間効果は、選択肢の提示の順序に関するバイアスで、リストの最初の項目を選択する傾向が優先効果で、人間の行動には中間に位置する数値的な選択肢を提示されると選ぶ中間効果もみられます。保険会社はこうしたバイアスを理解し、申込書におけるオプションの掲載順序やコールセンターでスクリプトに沿って説明する順序が消費者に不利益にならないようにすべきでしょう。
 慣性・現状維持は、損失回避のため新たな情報に基づき決断せず、初期の決定を維持する傾向で、後悔回避と関連しています。フレームは、顧客の選択に影響を与える戦略に使えます。欧州では男女均等料率により保険会社は性別をレーティングに使えません。「女性のための自動車保険」というキャッチコピーを用いた英国の自動車保険は、男女共に申込はでき、料率は同じですが、男性にはあまりアピールしないというやり方で、低リスクの女性契約者の割合を高めることに成功しています。
 人間の行動は意思決定に影響するため、保険会社は消費者のバイアスをよく理解し、アクチュアリーの商品開発からマーケティングの販売キャンペーンに至る全プロセスで慎重な対応が肝要です。消費者のバイアスを利用する際には倫理的かつ常に顧客の利益を最優先に考えます。

2017.01.26
新リーダー

【主張】1月4集(生保版)

 世界中の目が、これほど一人のリーダーの出現に注目する事態になろうとは、夢にも思わなかった。我国の国家論にまで影響する新米国大統領の登場であるから、他国の選挙報道と雖も選挙制度と社会的選択のあり方にまで関心が高くなったのも当然であろう。
 いずれにせよ選挙前の予想と異なった結果は、世論調査に集計されない多くの声無き声が反映されたわけであり、貧富の差に係わらず国民一人ひとりに割り当てられた一票の重みを目にすることができたのである。国家のあり方を直接的に国民の手で大きく変革させてしまう選挙のダイナミズムに、驚愕した日本国民も多かったはずである。選挙手段の妥当性やポピュリズム依存という批判も見られたが、選挙結果は当然、選ばれたリーダーと選んだ米国民の責任である。今後4年間どのような米国国家が形成され、全世界にどれだけの影響をもたらすのか注目せざるをえない。
 さて、外交・軍事や貿易政策に焦点が当たりやすいが、歴代の米国大統領の成績を、関与した医療保険制度改革について見ると、クリントン元大統領の制度改革頓挫、ブッシュ元大統領の遺伝子差別禁止法(GINA)成立、そして前オバマ大統領が推進したオバマケア(正式にはAC Act)という無保険者削減施策導入が、歴史の記録として語り継がれるはずである。個人破産の原因第一位が医療費という米国で、ようやく皆保険の達成に近づいたかに見えたオバマケアであるが、医療費管理システムの不備のため、多くの批判にさらされてきた。具体的には、民間医療保険の保険料やdeductible(入院費や手術費における保険免責部分)の価格上昇という副作用が出現したことである。一方、確実に無保険者が減っていることも事実であり、米国における国民皆保険の実現過程の紆余曲折を正に我々は目にしているのである。オバマケアを廃止し、医療保険の連邦管理から州政府管理へ戻す施策をトランプ氏は公約してきたが、就任後どのように医療保険制度を含め内政問題に対応するのかお手並を見ることにしたい。
 なお、米国新政権の政策は、政権移行チームがネットに公表しており、安全保障、雇用の確保および対国民施策が主要テーマである。国民施策のヘルスケア対策では、オバマケアの廃止とその他6項目が挙げられている。具体策というより新政権の方向性の列挙という印象にとどまっているが、伝統的白人の価値観も見え隠れする内容である。画期的新薬の開発推進も盛り込まれており国家間の競争が激化する懸念もある。日本の内政問題である最近の薬価政策を米国製薬企業が批判している。TPP交渉における国際合意が反故になれば、日本の医療保険の公定価格制度にも火の粉が及びかねない。畢竟、民間保険の商品施策にも影響し、「風邪が吹けば桶屋が儲かる」以上に、新政権の動向を業界としても注目せざるを得ない。   (客員・佐々木)

2017.01.24
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2017.01.18
新たな取組みに注目

【主張】1月3集(生保版)

 新年を迎えて、米国のトランプ新政権がどのような政策を打ち出すか、世界中が固唾をのんで注目している。我が国の経済社会環境にとって、些かでも好転するような方向性を示してもらいたいものだ。
 さて、少子高齢化の進行する生保市場において、業界各社ではニーズの多様化する顧客に対応した様々な商品を提供してきているが、今回は顧客に接する営業分野の注目すべき取組みについて、取りあげることとする。
 第一に、オリックス生命で昨年10月に新たな販売チャネルとして発足した直販チャネル「コンサーブアドバイザー」である。これは、ダイレクトチャネルにおける加入者の契約保全や見直しのほか、加入を検討している顧客からの要求に対し、対面でのコンサルティングサービスを行うものである。特筆すべきは、待遇面で固定給制を採用し、成績未達による解職をしないことで、安心して働ける環境が整い、それにより継続的な顧客へのフォローが実現していく。同時に、取扱者不在契約の解消にも繋がることになろう。
 今回の新チャネルについては、昨年2月、同社の片岡一則社長が直販チャネル立ち上げについて記者会見で明らかにしていたものだ。片岡社長は周知のとおり、これまで数社の生保会社経営に携わってきているが、会見の場において、過去、優秀な人材を採用したにも拘わらず成績評価等の待遇面での影響により、退職の申し出を慰留できなかった無念さを述懐していたが、その時の経験を踏まえた上で今回の「コンサーブアドバイザー」設立となったものであろう。同社長の積年の思いが伝わってくるところだ。
 第1期の7月入社については、様々な職種の900名以上から応募があり28名が採用され、研修を経て活動開始したものだ。応募数の多さは、如何に安定した雇用環境が重要視されているかに改めて気付かされる。この取組みは、言わば業界の常識を越える制度であり、今後の推移に大いに注目していきたい。
 第二に、明治安田生命での顧客来店窓口の改装である。これは、来店希望の顧客や自宅訪問を望まない顧客等に対応し、各支社の来店受付体制を整備するものとしている。
 現在、生命保険営業における職域市場は、セキュリティ上の観点から営業職員の出入りは厳しく制限されている。一方、地域においては加入対象者不在の家庭や訪問拒否の顧客が増加することにより、営業活動は困難を伴うケースがあるという。
 このような環境下においても、保障を必要とする顧客は大勢存在しており、普及推進に努めなければならない。同社の取組みは、顧客側から訪れて頂くもので、全国的に急拡大した来店型店舗と同様の販売拠点と言える。今後、更なる利便性の観点から、休日営業や店舗内におけるキッズコーナー設置等も課題となろう。より一層来訪しやすく親しみ易いい支社=保障の拠り所となることを期待したい。         (石原)
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